"都合のいい下請けの妹" 第5話
誰もらない父の暗証番号と帳
「……奈津子さん? 美羽、そこにいる?」
スピーカーから流れてきた由美さんの声は、息ががっていた。
背で何かが激しくに落ちる音が響いている。
「いるわよ。今、宿題をしてる」
私がややかに答えると、由美さんは掠れた声で言った。
「お願い、まで預かってて。誠さんが……さっき割れたガラステーブルでを切って、今科にってるの。帰ってきたら、今度は事務所にす類がないって暴れして……」
「類なら、仏壇の段目にあるわよ」
私が遮るように言うと、話の向こうが瞬で静まり返った。
「……え?」
「仏壇の段目の引きし。青いバインダーに、父さんの帳も、健康保険の脱退届の控えも、全部まとめて入れてある。からずっとそこよ」
「……あ、そうなの……」
由美さんの声に、らかな揺がった。
「それから、額療養費の還付申請。美羽に持たせたでしょう」
「あ、それは……誠さんが、奈津子さんにやらせろって……」
「やらないわよ」
私ははっきりと言い切った。
「受取座の指定には、相続代表者の座番号と兄さんの実印がいるの。私には何の権限もないわ。世帯主は兄さんなんだから、兄さんが自分で区役所にってしなさい」
「でも、誠さんは平に役所なんてけないって……」
「を取りなさい。実を継ぐって、そういうことでしょう」
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私はそれ以何も言わせず、通話を切った。
翌の曜。
私は朝から机に向かい、枚の学ノートを破ってペンをらせた。
父が利用していたの支名。
座番号。
凍結続きに必な戸籍謄本の通数。
公共料の引き落とし座の変更先窓。
墓の管理費を納める振込用の保管所。
父の携帯話の解約窓と、その解約。
兄がるべき、そして私がこの、すべて無償で代してきた「の雑務」のすべてだった。
暗証番号だけは空にした。そんなものは教える義理もないし、兄自が法定相続としての窓で示請求をすべきものだ。
枚に及んだそのメモを、私はクリアファイルに挟み、レターパックに入れた。
品名欄には『実管理に関する引き継ぎ類式』とだけき、宛先を兄の名にしてポストに叩き込んだ。
これで、私の元には実の類は枚も残っていない。
どこに何があるか、次に何をすべきか、その筋はすべて渡した。
あとは、男である彼らが自分で歩くだけだ。
だが、週がけた曜の夕方。
仕事を終えてアパートに戻った私のに、鋭いインターホンの音が突き刺さった。
覗き穴の向こうにっていたのは、兄ではなかった。
のトレンチコートの襟を握りしめ、青い顔をした由美さんが、たったでっていた。