みかん小説
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"都合のいい下請けの妹" 第2話

「あんた、美羽の叔母さんだろう?」

「……パパがそう言ったの?」

美羽はさく頷き、ギュッとランドセルの肩ベルトを握りしめた。

その爪の先はくなっていて、さな体が張っているのが痛いほど伝わってきた。

歳の子どもに、の事など関係ない。

けれど、この子がどれほど居の悪いいをしてここまで歩いてきたかは、その張った表を見ればすぐにわかった。

「とりあえず、入りなさい。靴を脱いで」

「……お邪魔します」

美羽は玄関にがり、言われるに自分の靴を揃えた。

その揃え方が妙に几帳面で、かえって胸が痛んだ。

私は洗面所でを洗わせ、麦茶をグラスに注いで美羽に持たせた。

美羽が両でグラスを持ってむのを見届けてから、私はスマートフォンを握りしめ、ベランダへた。

ヶ、履歴すらいていなかった兄の番号をタップする。

コール音が回鳴ったところで、ブツリと接続音がした。

『もしもし』

背から駅の構内アナウンスが聞こえる。

勤途なのだろう。その声には、平の朝特の苛ちが滲んでいた。

「誠兄さん、今美羽がうちに来てるんだけど。どういうこと?」

『あ、着いたか。ちゃんとでけたんだな』

悪びれる様子など欠片もない。まるで、荷物の配送状況を確認するような調だった。

「どういうことかって聞いてるの! 美羽、ボストンバッグまで持ってきてるのよ? 今から放課は全部うちに来いって、兄さんが言ったの?」

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『言ったよ。由美のパートのシフトが変わってさ、今から週で夕方まで勤務になったんだよ。美羽をで留守番させるわけにはいかないだろ。学童はになったから定員オーバーで入れないし、民のシッターなんて頼んだらに何万ぶとってんだよ』

私のの奥で、何かがプツンと音をてて切れそうになった。

「それを、どうして私に言の相談もなく決めるの? ヶ、兄さんは私に何て言った? 『もう度と実に来なくていい』って、鍵を取りげて、LINEグループからも追いしたじゃない!」

話の向こうで、兄が舌打ちをする音がはっきりと聞こえた。

『おさ、まだそんなこと根に持ってんの? あれは実の財産とかの管理の話だろ。おはもう実のじゃないんだから、線引きをするのは当たりだ』

「線引き? 族じゃないから実に来るなって言ったのは兄さんよ!」

『勘違いするなよ』

兄の声が、段くなった。

それは、彼が昔から自分の理屈を力ずくで通そうとするときに使う、な圧力を帯びた声音だった。

『実のやを継ぐのは男の役目だ。そこに部者がを挟むなと言ったんだ。でも、美羽はおの姪だろ? あんた、美羽の叔母さんだろうが。血がつながってんだよ』

「……は?」

『今までだって、親父の病院のついでに美羽の面倒見てただろ。

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保育園の迎えだって、がたときの病だって、おが当たりにやってたじゃないか。叔母が姪の面倒を見るのに、実の相続がどうとか関係あるか?』

あまりの勝さに、言葉を失った。

権利を主張するときは「嫁にた部者」。

面倒な労働を押し付けるときは「血のつながった内」。

この男ののでは、そのつが何の矛盾もなく同居しているのだ。

自分には決定権と財産があり、妹には無償で差しすべき義務だけが残されている。

その歪んだ構造を、兄は本気で「正当な族のあり方」だと信じ込んでいる。

背で、サッシのガラス越しに、リビングの美羽がそうにこちらを見つめているのが見えた。

ここでのままに鳴り散らせば、美羽をただ傷つけるだけだ。

私はえ切った息をく吐きし、スマートフォンのマイクに向かって言った。

「今は預かるわ。美羽がここに来ちゃった以、追い返すわけにはいかないから」

『ほら見ろ、できるんじゃないか。最初からそう言えば――』

「勘違いしないで」

私は兄の言葉を、い声で遮った。

「今だけよ。それから、毎なんて絶対に無理。週に、曜と曜だけ。それ以のは、兄さんたち夫婦でなんとかしなさい。それと、預かるはの夜までに、必ず由美さんか兄さんから事に連絡を入れること。

連絡がなければ、私は鍵をけないから」

『おい、奈津子! 週じゃりないって言ってんだろ!』

「嫌なら、今これから美羽を迎えに来て、民シッターを探しなさい」

私はそれだけ告げると、兄の反論を待たずに通話を切った。

リビングに戻ると、美羽は空になった麦茶のグラスを両で持ったまま、じっと固まっていた。

私は胸の奥のりを押し殺し、努めて穏やかな声を作って美羽のにかがみ込んだ。

「美羽、学まで送っていくから。準備しようね」

美羽はさく「うん」と頷いた。

その瞳には、すでにの顔を窺うような、諦めに似たが宿っていた。

そのの夕方、約束通り美羽は夕方に私のへ戻り、半に仕事を終えた由美さんが無言で引き取りに来た。

由美さんは「すみません」と言だけをげ、逃げるように美羽のを引いてっていった。

これで、しは私の言葉のみが通じただろう。

そうっていた。

だが、翌の曜。

私の勤務が終わる分、午分。

デスクに置いていたスマートフォンがく震えた。

画面に浮かびがったのは、兄からのメッセージだった。

『今も昨と同じで頼む』

疑問符も、頼み込む言葉も、昨の取り決めに対する言及も切ない。

ただの業務連絡のような、酷なだった。

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