"都合のいい下請けの妹" 第1話
「もう度と実に来なくていい」
「鍵、返してくれ」
通夜と告別式が終わり、父の骨壺を仏壇に納めた翌朝のことだった。
実の玄関で、兄の誠は私の目のにを突きしてきた。
「……え?」
「聞こえなかったか? 鍵を返せって言ってるんだ」
兄の声には、ためらいも苛ちもなかった。
まるで、コンビニのレジで割り箸を断るような、平坦で乾いた声だった。
「これからは俺がこのを管理する。も建物も、男である俺が相続する続きをめてるんだ。おはもう以に嫁にて、別の名字を名乗ってる部者だろ。何か用があるなら、俺か由美さんに事に連絡してくれ。勝に入られたら困る」
「勝にって……」
私の喉の奥から、乾いた息が漏れた。
父が倒れてからの、週に度の透析の送り迎えをしていたのは誰だったのか。
仕事帰りに実に寄り、蔵庫の賞期限切れの総菜を捨て、作り置きのおかずをタッパーに詰めていたのは誰だったのか。
誠が「今週はゴルフの接待で抜けられない」と言うたびに、父の子を押して民病院の待で待っていたのは、誰だったのか。
私には、言いたいことがほどあった。
けれど、兄の目の奥にある、え切ったを見た瞬に悟ってしまった。
このは、私のりを恐れてなどいない。
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ただ純粋に、邪魔者を片付ける作業をしているだけなのだ。
「……わかったわ」
私はバッグの底から、父が鍵用に買ってくれた猫のキーホルダーを取りした。
真鍮の鍵は、の摩擦でしすり減っていた。
それを兄の掌のに置くと、兄は指先でそれを握り込み、度も私の顔を見ずにポケットへと突っ込んだ。
「じゃあな。典の精算が終わったら、必最限の連絡はするから」
パタン、と。
く聞き慣れた実の玄関扉が、い音をてて閉まった。
そのの夜、スマートフォンの画面がくった。
族LINEの通だった。
『誠が奈津子をグループから退会させました』
たったの無質なシステムメッセージ。
メッセージの送信者は兄。
兄の妻である由美さんからのフォローも、スタンプつ送られてこなかった。
全から、すうっと温度が引いていくのがわかった。
悔しさやしみを通り越して、奇妙な静けさが胸のに広がっていった。
(ああ、そうか)
私は、最初からこののではなかったのだ。
父がきている、都のいい「介護員」として席を用されていただけだったのだ。
泣き言を言ってすがりつく気は、微も起きなかった。
私はスマートフォンのトーク画面を閉じ、通をオフにした。
もう度と、あのの敷居は跨がない。
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父への供養は、自分ので静かにをわせればそれでいい。
そうやってに分い蓋をしてから、ヶが過ぎた。
初の蒸し暑さが本格化し始めた、の曜の朝だった。
計の針は、午分。
勤の準備を終え、玄関の鍵をけようとしたその瞬、インターホンが甲く鳴り響いた。
覗き穴からを見ると、そこにはさながあった。
ドアをけると、歳になる兄の娘――美羽がっていた。
背にはパンパンに膨らんだランドセル。
そして元には、着替えが詰め込まれているらしき、さなボストンバッグが転がっていた。
「……美羽? どうしたの、こんな朝くに。お父さんは?」
私がしゃがみ込むと、美羽は怯えたように目を泳がせ、さな声で言った。
「パパが、ここにけって。今から学が終わったら、全部伯母ちゃんのにきなさいって言われたの」