みかん小説
本棚

"夫の葬儀で別の男を父と呼んだ息子" 第14話

親族席の沈黙

拓也の周忌法は、郊にある古い寺の本堂で執りわれた。

読経の声が、々しく堂内に響き渡る。

線の煙がち込め、の仏具が鈍くっていた。

親族席の最列には、黒い喪を着た義母と、私、そして悠斗が並んで座っていた。

悠斗は背筋をまっすぐに伸ばし、度もを向いた姿勢を崩さなかった。

数、私が「法事にはなさい。その代わり、終わったら誠さんに会いにく」と告げた、悠斗は驚いたように私を見つめ、それから「分かった」とく頷いた。

その約束を、この子は信じて座っているのだ。

「……田拓也儀、周忌追悼……」

僧侶の読経が佳境に入り、焼の図がされた。

義母がちがり、震えるで抹を摘まむ。

遺のの拓也は、と変わらない、し誇らしげな笑顔を浮かべていた。

親戚たちが次々とちがり、焼を済ませていく。

そのに、親戚の配の男性たちのひそひそ話がに届いた。

「……葬式のはどうなることかとったが、今はしいな」

「母親がしっかり言い聞かせたんだろう。父親の法事で、あの男の名なんぞされたら、拓也も浮かばれんからな」

無慮な言葉の刃が、私の背に突き刺さる。

だが、悠斗はを貸す様子もなく、自分の番が来ると静かにちがった。

炉のにみ、くをげ、指先で抹を摘まんで煙にくべる。

広告

そして、遺を見げ、く、くをわせた。

その背は、の斎で取り乱して泣き叫んでいた子供のものとはえないほど、凛としていた。

法が終わり、境内の客殿で精落としの会が始まった。

親戚たちが酒を酌み交わし、拓也のい話を語りっている。

義母は親戚たちに挨拶をして回りながら、満そうに私の方へやってきた。

「美さん、悠斗もちゃんとお務めを果たせたじゃない。ほら、やっぱりあんな男のことなんて、厳しく突っぱねれば子供は忘れるものなのよ」

勝利を誇るような義母の言葉に、私は静かに微笑み、会釈を返した。

「お義母さん、本はありがとうございました。拓也さんもんでいるといます」

「そうでしょう、そうでしょう。さあ、悠斗にもお寿司をべさせて……」

「申し訳ありません。悠斗と私は、これで失礼させていただきます」

義母のきが止まった。

「は? 失礼するって……まだ親戚の方々も残っているのよ? 施主の族が途で帰るなんて、常識がないわ」

「せない用事があるんです」

私は悠斗のを取った。悠斗のさなが、私の指をぎゅっと握り返してきた。

「用事って何よ。拓也の法より事な用事があるっていうの?」

義母の声がし鋭くなった。

周囲の親戚たちが、何事かとこちらに線を向ける。

私は義母の目をまっすぐに見つめた。

広告

逃げもせず、怯みもせず、ただの母親として、静かに告げた。

「拓也さんのためのは、これで終わりました。ここからは……きている悠斗のためのです」

「な……何を言ってるの、美さん!」

義母の狼狽する声を背に残し、私は悠斗を連れて客殿のへと歩きした。

親戚たちのざわめきが波のように広がっていったが、度も振り返らなかった。

寺の駐にめてあった軽自に乗り込み、ドアを閉めると、の音が遮断されて静寂が戻った。

運転席のバックミラー越しに部座席を見ると、喪を着た悠斗が、緊張した面持ちで私を見つめていた。

「お母さん」

「何?」

「……本当に、くの?」

「くわよ」

私はエンジンをかけ、シフトレバーをドライブに入れた。

「約束したでしょう。お母さんは、嘘はつかないわ」

は初のい陽射しのを、郊の古い団へ向けてりした。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: