"夫の葬儀で別の男を父と呼んだ息子" 第7話
もうの裏切り者
悠斗が部に閉じこもってから、が過ぎた。
事はドアのに置いておけば、夜に回収されて空の皿が戻ってくるが、顔をわせることはなかった。
私は仕事もにつかず、休暇を取って自宅にいた。
元には、拓也の遺品理の際に見つかった古い帳がある。
そこには、かつてが共同経営していた「ライズ・ロジスティクス」代の取引先や、当の関係者の連絡先が几帳面に記されていた。
私はそのから、当会社の経理を委託されていたという税理士の事務所に話をかけた。
「岡部先ですか。……くなった田拓也の妻の、美と申します」
事を話すと、老齢の税理士はいため息をつき、事務所に来ることを承諾してくれた。
都内の雑居ビルにある暗い事務所で、岡部税理士は温かい緑茶をしてくれた。
「拓也くんが急したと聞いて、驚きました。……まだ若かったのにね」
「岡部先。失礼を承で伺います。、主の会社が倒産した際のことについて、本当のことを教えていただきたいのです。佐伯さんが資を使い込んだと聞きました」
岡部税理士は茶をすすり、眉にい皺を刻んだ。
「……半分は本当で、半分は拓也くんの都のいい解釈ですよ」
「え?」
予の返答に、私はを乗りした。
「佐伯くんが、会社のを勝にかしたのは事実です。
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しかしね、奥さん。あれは佐伯くんが私利私欲で懐に入れたんじゃない。当、の取引先が突然倒産して、連鎖倒産の危に瀕していたんです。佐伯くんは自分の親戚から借を集め、それでもりずに、会社の別座からを回して支払いに充てた。会社を延命させるための、無謀で独善な暴だったんです」
のが真っになった。
佐伯が言っていた「個な負債の補填」とは、そういうだったのか。
「もちろん、法には横領と言われても仕方のない為です。拓也くんが激したのも無理はない。だがね……そのの拓也くんのやり方も、決して褒められたものじゃなかった」
岡部税理士の声がくなった。
「拓也くんは、や残った取引先に対して、こう説して回ったんです。『すべての責任は佐伯の横領にある。自分は何もらされていなかった被害者だ』とね」
「拓也さんが……?」
「ええ。そうしなければ、拓也くん個が背負うペナルティがきすぎたからだ。き残るための自己防だったんでしょう。だが拓也くんは、佐伯くんがて替えようとしていた事実も、会社を守ろうとしていた経緯もすべて伏せ、業界内に『佐伯は稀代の横領犯だ』と言いふらした。佐伯くんはこの業界から完全に干され、自己破産し、族にも逃げられた」
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岡部税理士は鏡をし、疲れたように目をこすった。
「拓也くんは最に、佐伯くんに言ったそうです。『おが俺のに度と現れないなら、刑事告訴は取りげてやる。その代わり、俺の族にも、悠斗にも度とづくな』とね」
胸が締め付けられ、呼吸が浅くなった。
拓也は、被害者だった。
だが、同に加害者でもあったのだ。
親友の暴によって会社を失いかけた恐怖から、拓也は佐伯のすべてを奪い、業界から追放し、そして息子との関係までをも質にしてを封じた。
『お父さんが、言ったんだ』
悠斗の叫びが蘇る。
『あいつのことは、お母さんには絶対に言うな。言ったら族がめちゃくちゃになるって』
拓也が恐れていたのは、佐伯という男そのものではなかった。
自分がき残るために親友を徹底に叩き潰し、そのを悪魔に仕てげて庭から抹殺したという事実を、妻や息子にられることだったのではないか。
帰り、夕暮れのを歩きながら、私は涙が止まらなかった。
仏壇ので優しく微笑んでいる拓也の顔が、どこまでもく、たくじられた。
夫はんでしまった。
どんなに問い詰めたくても、どんなに責めたくても、もう拓也はこの世にいない。
者は決して答えず、残された者だけが、その怨の残骸を引き受けさせられている。