"夫の葬儀で別の男を父と呼んだ息子" 第3話
押し入れの古いアルバム
翌朝、インターホンの鋭い音で目が覚めた。
ドアをけると、義母が険しい顔でっていた。
「悠斗は?」
「まだ、部で寝ています」
義母は靴を脱ぐなりリビングへがり込み、拓也の遺に度だけをわせると、私に向き直った。
「美さん。昨の男のことだけどね、度と探ろうなんてっちゃ駄目よ」
挨拶もなしに切りされた言葉に、私は胸の奥がたくなるのをじた。
「お義母さん、あの方は本当に拓也さんの同僚だったんですか? 悠斗は、拓也さんから『母さんには絶対言うな』と止めされていたと言っています」
義母の眉がピクリといた。
だが、すぐに線を逸らし、吐き捨てるように言った。
「あの子も余計なことを……。いいかい、美さん。あの男は佐伯っていうの。何も、拓也と緒にさな会社をやってた男よ。でもね、途でに汚い本性をして、会社を潰したの。拓也はそのせいで何千万もの借を背負わされそうになって、命からがら逃げしたんだから」
「借……?」
「そうよ。拓也のを狂わせた疫病神なの。だから拓也はあの男を底憎んでた。悠斗が赤ん坊の頃は確かににも入りしてたけど、縁を切ってからは切関わってないはずよ。悠斗があんな呼び方をしたのは、さい頃の記憶が変な形で残ってただけ。
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これ以、あの男のことを掘り返してどうするの? 拓也の名誉に関わるわ」
義母はそれだけを気にまくしたてると、持ってきた果物の籠をテーブルに置き、に帰っていった。
まるで、私にそれ以の質問をさせないための先だった。
だが、義母の説には決定な矛盾がある。
もし拓也が佐伯という男を底憎み、完全に縁を切っていたのなら、なぜ悠斗に「お母さんには絶対言うな」などと止めをする必があるのか。
ただの憎むべき過のなら、「度とづくな」と叱りつければ済む話だ。
私は悠斗がまだ眠っているのを確認し、拓也の斎へと向かった。
畳ほどのさな部。
壁際の本棚には、ビジネスやゴルフの雑誌が並んでいる。
拓也は、自分の持ち物に私が触れるのを嫌がっていたわけではない。だが、特定の引きしや箱には、無識の結界が張られていたような気がする。
押し入れの奥、用の羽毛布団の裏側に、古びた段ボール箱がつ押し込まれていた。
テープを剥がし、を確認する。
学代のノート、昔の与細、古い携帯話。
その番底に、布張りの分いアルバムが眠っていた。
リビングの本棚に並んでいる「族のアルバム」とは違う。
表には何もかれていない。
埃を払い、恐る恐るページをめくった。
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枚目から、私のらない景が広がっていた。
付は今から。悠斗が歳の頃だ。
公園の砂で、だらけになって笑う悠斗。
その隣で、膝をついて団子を作っている男の姿があった。
昨、斎に現れたあの男だった。
今よりし髪が黒く、穏やかな目元を細めて笑っている。
ページをめくるごとに、男の姿が次々と現れた。
補助輪をしたばかりの自転のろを、必で支えてる佐伯。
川沿いの会で、悠斗を肩している佐伯。
をした悠斗の額に、えピタを貼りながら配そうに覗き込む佐伯。
そして、幼稚園の入園式の写真。
園ので、ブレザーを着たさな悠斗のを、から拓也が、から佐伯が握っていた。
の男はカメラに向かって、誇らしそうに、まるでの父親のように肩を並べて笑っていた。
私のから、アルバムが滑り落ちそうになった。
この頃、私は何をしていた?
そうだ、私は産復帰したばかりで、社内のプロジェクトリーダーを任され、毎晩終くまで働いていた。
拓也も独したばかりで忙しいと言っていた。
「悠斗の面倒は俺が見てるから、美は仕事に集していいよ」
拓也はいつもそう言ってくれていたはずだ。
私は夫の言葉に甘え、夫がで悠斗の面倒を見ていると信じ切っていた。
だが、現実は違っていた。
拓也の隣には、常にこの男がいたのだ。
悠斗の「初めて」の瞬のくに、母親である私ではなく、この男がち会っていた。
アルバムの最のページ。
ポケットの隙に、名刺が枚挟まっていた。
『ライズ・ロジスティクス株式会社 取締役 佐伯 誠』
裏面には、拓也の跡で、携帯話の番号が殴りきされていた。