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"四年間、他人の父親" 第17話

受かりました

正午過ぎ、学の正をた。

がりの青空が広がり、の葉がに揺れてキラキラとを弾いていた。

ので、川が自分の軽トラックのドアをけながら言った。

「織さん、送っていくよ。まだ警察の類やら何やらで変だろ」

「ありがとうございます、川さん……」

織は何度も私に向かってをげた。

「田さん、本当に……何とお礼を申しげたらいいか……」

「お礼なんていりません」

私は静かに首を横に振った。

「私は何もしていません。夫の始末をしに来ただけです」

織はそれ以何も言わず、もう度くをげてから、軽トラックの助席に乗り込んだ。

川が運転席から私を見つめ、く言った。

「美さん。悪かったな、いろいろ」

「いいえ。浩の友達でいてくれて、ありがとう」

川は困ったようにを鳴らし、エンジンをかけた。

トラックがりそうとした、荷台のろにっていた陸が、にを止めて私を振り返った。

は何かを言いかけてごもり、線を宙に彷徨わせた。

謝の言葉をにするには、このはあまりに器用で、プライドがすぎた。

私は歩み寄り、ポケットから先ほどつ折りにしたプリントを取りした。赤線で夫の名が消された、あの面談程表だ。

私はその裏側のい余に、先ほど川から借りたペンで、さらさらと自分の携帯話の番号をき留めていた。

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それを、の制の胸ポケットに、無造作に差し込んだ。

「……何、これ」

陸が眉を寄せる。

「私の携帯の番号よ」

私は陸の目を真っ直ぐに見つめた。

「勘違いしないでね。私はあなたの保護者でも、族でもない。学費の面倒を見る気もないし、の相談に乗る気もないわ」

陸は黙って私を見ていた。

「でもね」

私はしだけ元を緩めた。

「もしこの先、あなたのので……『父親』を呼ぶ必はないけれど、ただ誰かに話を聞いてほしい夜があったら、その番号にかけなさい。話くらいなら、いくらでも聞いてあげる」

陸の喉仏が、きくした。

は胸ポケットの切れを指先でそっと押さえ、それから、誰にも聞こえないようなさな声で呟いた。

「……かけねえよ、別に」

「そう。なら、捨てていいわ」

陸はそれ以何も言わず、くるりと背を向けると、発しかけていた軽トラックの荷台の横をり、助席の窓にしがみつくようにして乗り込んだ。

砂利をねげながら、古い軽トラックが宅の角を曲がって消えていく。

見送る私の胸のに、議な静けさが広がっていた。

浩が遺した穴は、埋まったわけではない。

あのがなぜに『そうだな』と呟いたのか。子どもが欲しかったのか、それとも本当に私との自由な暮らしを選んだのか。その答えは、どれだけをかけても、永に分からないままだ。

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連れ添った夫婦であっても、相ののすべてを所することなどできない。には誰しも、者には決して触れさせない、名付けようのない孤独の領域がある。

浩はあの空席のパイプ子に、自分の孤独のさを預けていただけだったのかもしれない。

そして私は、その謎を解きかすことを、もう諦めていた。分からないままでいい。分からないという事実そのものを抱えて、きていけばいいのだ。

私は回れをして、駅へ向かう並をで歩き始めた。

*

季節が巡り、の終わり。

京に珍しくがったの夕暮れだった。

私はエプロンを締め、台所で分の夕飯の支度をしていた。鍋ので、根と油揚げの噌汁が静かに湯気をてている。

居の押し入れの段ボールは、先週すべて理した。

浩の帳も、あのっぽい紺のネクタイも、押し入れの最段の引きしの奥に、丁寧にしまい込んだ。もう、むやみに引っ張りして付を照することはない。

まな板ので松菜を刻んでいた、調理台の脇に置いてあったスマートフォンが、く震えた。

着信ではない。件のメッセージの通だった。

を拭き、画面をタップする。

登録されていない話番号から届いたメッセージには、写真が枚添付されていた。

ピンボケした写真に写っていたのは、掲示板に貼りされた否結果の番号の覧と、そのでぎこちなく掲げられた枚の類。

『京都武蔵野等学 格通』

本文には、候の挨拶も、私の名も、謝の言葉もなかった。

ただ、だけ。

『受かりました。』

それだけだった。

私はスマートフォンの画面を見つめたまま、さく息を吐いた。

たいキッチンの空気ので、胸の奥がじんわりと温かくなっていくのをじた。

私はキーボードを呼びし、迷うことなく文字だけを打ち込んだ。

『おめでとう。』

送信ボタンを押し、スマートフォンを画面をにして調理台のに置いた。

それ以のやり取りは必なかった。返信を待つこともない。私たちは族になることも、親子になることもない。ただ、同じの男の記憶を共したのとして、それぞれの所で、それぞれのを引き受けてきていくだけだ。

コトコトと、鍋の蓋がさく音をてた。

私は菜箸を取り、煮えつ噌汁のを止めた。

部のには、温かい汁の匂いが満ちていた。

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