"出来が良すぎるという理由" 第11話
青いボールペンの跡
ノートの最初の数ページは、のないブレインストーミングのメモだった。
〇からにかけての付が、青いゲルインクのペンで几帳面に記されている。
跡が、黒澤のものとはらかに違っていた。
黒澤の文字は、万特のい圧と、がりの鋭い傾斜が特徴だ。
だが、このノートの文字は、丸みを帯びた、細く均な致でかれていた。まるで几帳面な女子学が講義ノートを取っているような、繊細な線だった。
『なぜモノを買わなければならないのか?』
『所することのコスト=保管所、メンテナンス、廃棄の罪悪』
『シェアハウスの同士で、を共できないか?』
ページをめくるが速くなる。
の付のページに、それはあった。
糊付けされた枚の黄い付箋。
そこに、あの角形の概図が描かれていた。
央にバツ印がつけられたサーバーのアイコン。
その周囲を取り囲むのユーザー。
矢印が循環し、余剰リソースが直接受け渡される構造。
そして、その付箋のに、青いインクでこう殴りきされていた。
『個が抱え落ちしている失敗コストを、コミュニティの共資産へ反転させる。プラットフォームは所を提供するだけで、には切触らない。これが番美しい』
黒澤が喫煙所で私に吐き捨てた言葉と、言句狂わずに同じだった。
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私は息を詰め、ノートの最のページへ線をらせた。
プロジェクトの参加メンバー表が、きで残されていた。
『プロジェクトリーダー:黒澤誠司』
『サブリーダー:佐々(退職)』
『リサーチ・記録担当:インターン 葵』
葵。
その名に、私は全く見覚えがなかった。
会社のイントラネットの社員名簿を検索しても、そんな名の社員はもしない。
私は付箋をそっと持ちげてみた。
付箋の裏側、ノートの罫線のに、鉛でくきされた文字が残っていた。
消しゴムで消そうとして、途で諦めたようない跡だった。
『この図を黒澤さんに見せたら、すごく面いと言ってくれた。来週の企画に入れてくれるらしい。私の名も、企画協力として載せてくれると言っていた。信じていいのかな』
胸の奥を、鈍器で殴られたような衝撃がった。
葵は、社員ですらなかった。
、この会社に数かだけ籍していた、ただの学のインターンだったのだ。
私はノートを抱え、震えるでスマートフォンのカメラを起した。
黄い付箋、青いペンの跡、インターン葵の署名、そして鉛でかれた切な独。
画面がブレないよう、膝で腕を固定しながら、枚枚、確実に撮していった。
「神くん、もう分だ! 警備員が戻ってくるぞ!」
倉庫の入りから、野寺さんの焦った声が響いた。
「すぐます!」
私は撮を終えたノートを慎に元の段ボール箱へ戻し、埃を被った蓋を閉じた。
胸ポケットに入れたスマートフォンが、鉛のようにくじられた。
黒澤は言った。
『の体から剥ぎ取った軍を着て表彰台にがるな』と。
だが、あの男自がどうだったのか。
、自分がみしたと信じ込み、会社に握り潰された劇の傑作だと誇りにしてきたあの企画の骨組みは、名もなきインターンのノートから掠め取ったものだったのだ。
階へ戻る非常階段を駆けがりながら、私の脳裏に渦巻いていたのは、勝利の歓ではなかった。
ただただ、え切った、底のない吐き気だった。