みかん小説
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"出来が良すぎるという理由" 第10話

鍵のかかった倉庫

同コンプライアンス委員会まで、残りを切っていた。

社内での私のは、テストランの成功によって奇妙な宙づり状態に置かれていた。

ヤマト品が向きな姿勢を見せたことで、企画そのものの息の根が止まることは免れた。だが、それは同に「この果実を誰の名義義義義义で収穫するか」という利権の争奪戦に、会社の層部を本格に巻き込むことをしていた。

「神、悪いことは言わないから打ちにしなさい」

昼過ぎ、事マネージャーの寺崎に再び呼びされた。

今度は湯ではなく、ガラス張りの役員面談だった。

「の委員会で、森常務から折衷案がる。企画の主担当はお、統括監修に黒澤さんを据える。最優秀賞の賞万はおが受け取り、社内報のクレジットは連名にする。これで黒澤さんも取消申請を取りげるはずだ」

「連名、ですか」

私は乾いた声で返した。

「それは、私が黒澤さんのアイデアを盗んだと認めることと同じです」

「盗作だなんて誰も言っていない。組織で仕事をする以、先輩の見を借りて形にするのは当たりのことだ。おはし、オリジナリティという言葉を神格化しすぎている」

寺崎はボールペンの先で机を叩き、苛ちを隠さずに言った。

「これ以の仕を続ければ、役員会はおを『扱いづらい気な』と見なすぞ。

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そうなれば、規事業のリーダーどころか、来期は方の営業所ばしだ。それでもいいのか?」

脅しだった。企業の論理で、個の尊厳をすり潰しにかかるの、最も典型なだ。

私は席をち、寺崎に礼した。

「の朝まで、待ってください」

「神!」

背にんできた呼び止めを無して、私はエレベーターホールへた。

妥協案を呑めば、表面には勝者になれる。万もに入り、規事業のメンバーにも残れるだろう。

だが、その瞬に私の背には「先輩の褌で相撲を取った」という消えない焼き印が押されるのだ。今、何かを提案するたびに、周囲から「また誰かの古い企画を拾ってきたのか」と囁かれ続ける。そんな屈辱には耐えられない。

勝つためには、黒澤の「の企画」そのものを根底から解体する必があった。

午、業務終のチャイムが鳴ると同に、私は階の総務管理倉庫へ向かった。

デジタルの監査報告は読んだ。だが、そこには数字と役員の決裁印しか残されていない。

黒澤がに実際に何をき、どのような考の跡を辿ってあの角形の循環図にき着いたのか。その々しい肉声は、のデータのにしかないはずだった。

倉庫の鉄扉のには、老鏡をかけた管理の男がパイプ子に座って夕刊を読んでいた。

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社内報で勤続表彰を受けていた、嘱託職員の野寺さんだった。

「野寺さん、すみません」

「ん? 神くんか。こんなにどうしたんだい」

私はポケットから、昼休みにフロアの自販で買ったし価なドリップコーヒーのギフトボックスを取りし、机の端に置いた。

「お願いがあって来ました。〇度の、第制作部のプロジェクト資料を閲覧させてほしいんです」

野寺さんは眉をひそめ、老鏡の位置を直した。

「〇の? あそこらへんの代のファイルは、先週デジタル移の確認が終わって、来の溶解処理を待つだけの状態だよ。本来なら、部クラスの持ちし許証がないと入れられないんだが」

「分だけでいいんです。そので見るだけで、持ちしはしません。どうしても、のコンプラ委員会で確認しなければならない事実があるんです」

野寺さんは私の顔をじっと見つめた。私の目のの隈と、尋常ではない気迫に何かを察したのか、く溜息をついた。

「……今、見回りの警備員が飯をいにっている。分だけだ。何かあっても、私は見て見ぬふりをするからね」

野寺さんは腰のキーリングから真鍮の鍵をし、い鉄扉のシリンダーに差し込んだ。

ギィという油の切れた音とともに、扉がいた。

埃と、酸化したの饐えた匂いが、暗の奥から押し寄せてくる。

蛍灯のスイッチを入れると、無数のスチールラックが然と並んでいた。

私は段ボールの側面に印字された暦を辿りながら、番奥の湿った角へとにんだ。

『2011 制作局・第2制作部 廃棄予定』

積まれたつの段ボール箱のうち、番にあった箱の封をガムテープごと引き裂いた。

には、茶く変したクリアホルダー、企画の原稿、印刷されたテスト用のチラシが雑然と詰め込まれていた。

黒澤の名が入ったファイルを次々と引っ張りす。

専用端末の設計図、井との交渉メモ、そして役員会へのプレゼン議事録。

すべてが、黒澤の角張った、圧のい黒インクの文字で埋め尽くされていた。

だが、箱の底、湿気で底板がたわんだ隙に、とは違う冊のノートが挟まっていた。

表のない、無印良品のリングノート。

角がボロボロに擦り切れ、背表の針が歪んでいる。

何気なくそれを引き抜き、埃を払っていた瞬、私の指が凍りついた。

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