"出来が良すぎるという理由" 第6話
千万円の赤字
羅の言葉が、トゲのように胸の奥に刺さったまま抜けなかった。
に何があったのか。
黒澤はなぜ、あれほど頑なに「の骨」という言葉に執着するのか。
午。私は回りの名目で制作フロアをると、階の業務報管理へ向かった。
社内の財務データや過のプロジェクト収支報告は、定の次が経過すると媒体からPDF化され、社内イントラネットの層アーカイブに隔される。般社員の閲覧には制限がかかっているが、制作部の共用アカウントでログインすれば、過の『案件別損益計算』の概までは照会できる抜け穴があった。
暗い検索端末のに座り、キーボードを叩く。
度指定:〇度。
部署コード:旧第制作部。
キーワード:『遊休資産』『相互循環』。
検索結果は、わずか件だけヒットした。
『コード:2011-PJ-088 ローカルリソース循環実証実験(黒澤PJ) ステータス:途終(制凍結)』
私はマウスを握るに力を込め、詳細画面をいた。
画面に表示された決算総括表の数字を見た瞬、私は自分の目を疑った。
売:万千円。
投資本:千百万円。
営業損失:マイナス千百万千円。
「千万……?」
声が漏れた。
単なる企画倒れではなかった。
実際に予算がつき、社内ベンチャーのような形で実証実験までわれていたのだ。
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そして、結果は惨憺たる赤字だった。
添付されていた『プロジェクト監査報告』をスクロールする。
黒のPDFに並ぶ監査役の容赦のないテキストが、網膜を焼いた。
《問題点1:専用ハードウェア端末の独自発への過剰投資。販のフィーチャーフォンや初期型スマートフォンでのブラウザ運用を頑なに拒み、専用のICタグ読み取りを百台製造。製造原価が当初予算を百パーセント超過した》
《問題点2:ユーザー需の完全な見誤り。般モニターへのアンケート結果を『消費者のリテラシーが追いついていないだけだ』と蹴し、独善な能追加を》
《問題点3:責任者の態度。報告会において、経営陣のコスト削減求に対し『このを理解できない会社に未来はない』と発言。事業継続は極めて困難と判断》
ページの番、最終決裁欄には、当の第制作部——現の常務取締役である森の、荒々しいサインが残されていた。
『本企画のコンセプト自体には見るべき点がある。しかし、責任者・黒澤の独善とコスト識の欠如により、会社に過できない損害を与えた。よって、本付で本プロジェクトを凍結し、以、同種の案件に関する再提案を切禁ずる』
画面のかりが、私の顔を青く照らしていた。
黒澤は、代を先取りしすぎた才でも、無理解な層部に潰された劇のヒーローでもなかった。
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自分の美学に酔いしれ、会社のを千万円も溶かし、顧客の声を無して突っり、自滅した男の残骸だったのだ。
「なんだよ、これ……」
乾いた笑いがこぼれ落ちた。
そんな失敗の記録を、あの男は、まるで勲章のように胸ポケットに仕い込んでいたというのか。
そして今、私がその失敗を最のインフラとデータで塗り替えようとした途端、霊のように現れて「俺の骨だ」と喚き散らしている。
あまりにも滑稽で、あまりにも見苦しい。
私は監査報告のPDFをUSBメモリにダウンロードし、端末をログアウトした。
これがあれば勝てる。
曜の同委員会で、この千万円の赤字データを突きつけてやればいい。
『黒澤さんの企画は、に会社を危に陥れた欠陥商品です。私が作ったのは、その失敗を完全に排除した全く別の事業モデルです』と。
だが、席をとうとした私の界の端に、監査報告の最終ページに挟まれていた、枚のスキャン画像がび込んできた。
プロジェクト凍結の翌、黒澤が森部(当)宛に提した、枚きりのきの始末だった。
『すべての責任は起案者である私にあります。投予算の損失分については、向こうの賞与辞退および昇格止の処分を受け入れます。ただし、企画の基本構そのものが否定されたわけではないことの記録のみ、社内マニュアルへの残を請します』
掠れた万の文字だった。
の端が、何度も握りしめられたように波打っていた。