みかん小説
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"出来が良すぎるという理由" 第5話

第位のめた目

表彰式が「材トラブル」という名目で無期限延期されてから。

社内の空気は、目に見えて淀み始めていた。

朝番で社しても、制作フロアの同僚たちは私の顔を見ようとしない。

普段なら「昨の等、奢りな」と軽を叩いてくるはずの先輩が、私の姿を認めた瞬に線を自然にパソコンのモニターへ落とし、エンターキーをく叩いた。

コピーの順番待ちですれ違った別チームのディレクターは、骨に歩幅を緩め、私と目がわない角度で踵を返した。

審査結果の保留。

公式な社内報には何もかれていない。だが、直属のシニアプランナーである黒澤が事に異議を申して、受賞が宙に浮いているという噂は、役員フロアから気に末端の現まで染み渡っていた。

「おい、神」

午、フロアの奥から黒澤の声がんだ。

自席から顔をげると、黒澤はデスクに積みになったの束を指差していた。

「来週競の料メーカー、過分の稿データと競社のテレビCM投量、エクセルで洗っておけ。今だ」

「……規事業の件は、どうなっているんですか」

私の問いに、周囲のキーボードを叩く音がわずかに止まった。

黒澤は引きしから赤ペンを取りし、キャップをしながら淡々と言った。

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「その件は事が預かっている。おの今の仕事は、競データの理だ。をかせ」

抗議の言葉をみ込み、私はちがって資料を受け取った。

渡されたのたさが、のひらから指先へじわりと広がる。

この男にとって、昨夜の私の徹夜も、マニュアルの百ページを突きつけた激論も、常業務の些事に過ぎないのだと言わんばかりの態度だった。

息が詰まり、私は昼休みにの自販コーナーへ逃げ込んだ。

蛍灯が本切れてチカチカと点滅する暗いスペースで、缶のブラックコーヒーを買い、えたスチール缶を首筋に当てた。

「神」

背からスニーカーの音がづいてきた。

振り向くと、同期の島羅がっていた。

にはコンビニのサンドイッチと、パックの緑茶。首からげた社員証のストラップには、社内コンペのファイナリストにだけ配られた青いリボンがまだ付いたままだった。

「……羅」

「やっぱりここにいた。デスクにいないから探したよ」

羅は自販の横のベンチに腰をろすと、サンドイッチのフィルムを指先で器用に剥がし始めた。

その横顔には、昨の壇と同じ、張り詰めた平の静けさがあった。

「聞いたよ。黒澤さんとやりってるんだって?」

「事に言いがかりをつけられただけだ。私が昔の社内資料を盗用したって」

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私はコーヒーのプルタブを引き、気に半分ほどみ干した。苦が舌の奥に焼き付く。

「羅、おはってるだろ? 私がこの企画のために、からどれだけを使ってヒアリングしたか。夜まで阿佐ヶのファミレスで、シェアハウスにんでる連の愚痴を聞き回って、から数字を組みてた。それを……に似たような絵を描いた奴がいるからって、全部なかったことにされる筋いはない」

羅はサンドイッチをに運び、咀嚼してから、パックの緑茶をストローですすった。

慰めの言葉も、同の線も返ってこない。

「神さ、黒澤さんの企画、全部読んだの?」

「……概と、あの角形の概図だけは見た」

「なら、言っておくけど」

羅はストローからをし、初めて私の目をまっすぐに見つめた。

その瞳の奥には、残酷なほど静な論理があった。

「ビジネスモデルの皮をいくらしく張り替えても、神の企画が解決しようとしてる根本の課題——『制度からこぼれ落ちた個の余剰をどう集約するか』っていう問いのて方は、完全に黒澤さんのの提案と同じだよ」

「な……」

「らないで聞いて。私は神が盗んだとはってない。でもね、もしあの図をマニュアルで見て無識に引き継いでいたんだとしたら、それは『純粋なオリジナル』とは呼べない。

装がテスラでも、エンジンブロックの基本構造が昔のホンダの特許と同じなら、それはしいとは言えないの」

「羅、お……」

私の声がく震えた。

「おは、私が失格になれば第位に繰りがるから、そう言ってるのか?」

からた瞬、最な質問だと分かった。

だが、追い詰められた私のは止まらなかった。

羅の眉が、わずかにピクリといた。

だが、彼女は鳴りもせず、ただ静かにパックを握りつぶした。

「私が位になりたいのは当たりでしょ。万の賞も、規事業のリーダー権限も、神と同じくらい喉からがるほど欲しいよ。でもね」

羅はちがり、ゴミ箱に正確にパックを投げ入れた。乾いた音が響く。

「私は、神の企画がしなかったことにされて繰りがる位なんて、反吐がるほどいらない。そんなもので事業をちげたって、最初の壁にぶつかったに『どうせあいつの失格で拾った枠だ』ってを叩かれ続けるだけだから」

羅は私の横を通り過ぎる際、を止め、徹な声で囁いた。

「黒澤さんをただの老害扱いして逃げない方がいいよ。あのがに役員会で何を言われて、あの企画がどうやって握り潰されたのか、神は本当にってるの?」

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