みかん小説
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"出来が良すぎるという理由" 第2話

〇の残骸

「何を根拠にそんな言いがかりを……!」

私はちがりかけた。

パイプ子の脚がを擦り、甲い摩擦音をてる。

「座りなさい、神」

寺崎の声は静かだったが、反論を許さないたさがあった。

「私は今、おを断罪するためにここにいるんじゃない。役員が壇にがるに、この事態をどう処理すべきか確認しているんだ。もし表彰式の最に黒澤さんが公然と異議を唱えたら、会社全体のコンプライアンス問題になる」

「私が盗作でもしたと疑っているんですか?」

「黒澤さんが提した添付資料がある」

寺崎が元のブリーフケースにを伸ばした瞬、控のドアノブがガチャリと音をてた。

鍵がかかっていることに気づいたのが、ノックを回、正確なリズムで刻む。

寺崎が無言でちがり、鍵をけた。

いた扉の隙から、のスリーピースを着た男が入ってきた。

黒澤誠司だった。

歳。無駄な脂肪のない痩躯に、縁の鏡。

社内では「最もトラブルを起こさない堅」としてられ、クライアントからの信頼もい。派なヒット作こそないが、黒澤が担当する案件で赤字をしたものは過で度もない。

黒澤は私と目をわせようともしなかった。

に、茶く変したのバインダーを抱えている。

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「黒澤さん」

私が声を荒らげようとすると、黒澤はそれを完全に無して、バインダーをドンと机の央に放りした。

埃っぽい、古いの匂いが狭い部に充満する。

「寺崎、事の見解はたか」

黒澤の声は、いつもの業務報告のと何つ変わらない、抑揚のない音だった。

「まだだ。今、神本に確認を始めたところだ」

「確認も何もない。そのファイルをめくれば終わる話だ」

黒澤の細い指が、バインダーの背表を指した。

そこには、掠れた黒いインクでスタンプが押されている。

『2011-P-044 社内保管期限:無期限』

〇。

私がまだ、歳だった頃の数字だ。

「けろ、神」

黒澤が初めて、私を真正面から見据えた。

鏡の奥のは、りでも侮蔑でもなく、何か取り返しのつかない傷を検分するような、酷く乾いた徹さを湛えていた。

私は震える指先で、具をした。

表をめくる。黄ばんだ質に、古いフォントの朝体でタイトルが印字されていた。

『遊休資産の域相互循環型プラットフォーム構築に関する考察』

企画案者:第制作部 黒澤誠司

私の指が、の端で止まった。

「ページ目だ」

黒澤が言った。

唾をみ込みながら、ページをめくる。

ページ目の央に、黒い線で描かれた概図があった。

私は息を呑んだ。

『央集権型サプライチェーンから、末端ノードの余剰リソース自律交換モデルへ』

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図の配置。

角形の頂点に置かれた管理システムを排し、末端のユーザー同士が余剰リソースを融通しう相互評価ネットワーク。

信用の担保をプラットフォームではなく、ローカルコミュニティの過ログに委ねるアーキテクチャ。

それは、私が今回のコンペで提案した企画の、最も根幹をなす構造と、完全に致していた。

もちろん、使われている言葉は古い。

当はスマートフォンが普及し始めたばかりで、アプリの通信速度やクラウドの概も現とは比較にならないほど未熟だったはずだ。決済段もクレジットカードとの振込を提に設計されている。

だが、違う。

枝葉のテクノロジーをすべて剥ぎ取ったに残る、「なぜこのシステムがしなければならないのか」という最初の骨組みが、私が昨まで徹夜して描き殴っていた画面の構成図と、瓜つだった。

「……な、んで……」

喉が痙攣したように、声が漏れた。

「神」

黒澤が、私のから静かに言葉を落とした。

「おは、この図をどこで見た?」

「見てません! 見るわけがないでしょう! 〇なんて、私は学でした!」

「社内のアーカイブサーバは、権限さえあれば過分の企画を閲覧できる」

「アクセスログを調べてください! 私は制作部の共フォルダ以、度もログインしていません!」

私はちがり、黒澤に詰め寄った。

「私が考えたんです! 今の若い世代が、モノを所することに疲弊して、それでも誰かと緩やかにつながりたいという違を、私自の実から組みてたんです! 誰かの真似なんかじゃない!」

黒澤は表つ変えなかった。

私の叫びを、まるで通り過ぎるのように受け流し、元のバインダーに線を落とした。

「実、か」

黒澤の元が、わずかに歪んだ。

「おのその綺麗なプレゼン資料の、パーセントは確かに現代の言葉でかれている。SNSの活用法も、インフルエンサーの巻き込み方も、俺には到底いつかないスマートなだ」

黒澤は差し指の爪で、ページ目の褪せた図をトントンと叩いた。

「だがな、このにある本の背骨——『個が抱え落ちしている失敗コストを、コミュニティの共資産へ反転させる』という発だけは、代のガキが現もらずにいつけるほど甘いもんじゃない」

「なっ……」

「おはどこかでこれを拾ったんだ。識か、無識かはらん。だが、の体から剥ぎ取った軍を着て表彰台にがることは、俺が許さない」

「黒澤さん、言葉が過ぎます」

寺崎が割って入った。

しかし、黒澤は止まらなかった。

「寺崎、審査委員会に伝えろ。神の最優秀賞を取り消し、該当者なしにするか、位の島羅を繰りげろ。

この企画をそのままめるなら、俺はの原案者として、役員会に正式な調査請求をす」

控の壁掛け計が、無質な秒針の音を刻んでいた。

表彰式の予定刻まで、あと分を切っていた。

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