"「お前はただの手伝いだ」" 第16話
端のい野菊
午。
Cホールの引き戸が静かに閉め切られ、告別式が始まった。
読経は、所の古い寺の老僧がだけでげていた。派な太鼓も、鐘の連打もない。ただ、く落ち着いた声が、狭い空に染み渡っていく。
脚のパイプ子は、すべて埋まっていた。
番の列には、作業着のまま駆けつけた百の夫婦。そのろには、静さんがに遣いを握らせていた元清掃員の老女たち。そして番ろの席には、昨と同じ褪せたコートを着た子が、静かに背筋を伸ばして座っていた。
修司は親族席の真んに座っていた。
着替えるもなく、汚れたワイシャツのに黒い羽織を引っ掛けただけの姿だった。だが、その背は昨のように張っておらず、ただ静かに、方のの祭壇を見つめていた。
読経が終わり、最のお別れのが訪れた。
棺の蓋がけられる。
静さんの顔は、の本祭壇ので、穏やかに澄み渡っていた。
「おをお入れください」
納棺師の声に従い、参列者たちがずつちがった。
価なは輪もなかった。千が今朝、会館の裏ので摘んできた、に濡れたい野菊の束が、籠に盛られて置かれていた。
百の主が、野菊を静さんの胸元に置いた。
「静さん、国でもあんまりうるさく値切るんじゃないよ」
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元清掃員の老婆が、たくなった義母のに触れた。
「奥さん、本当にありがとうね。あたしの息子の入学祝い、あの包んでくれたの、ずっと忘れてないよ」
子が、最に棺のにみた。
子は野菊を輪に取り、い、静さんの顔を見つめていた。その瞳から、粒の涙がぽろぽろと零れ落ち、棺ののい布に吸い込まれていった。
「……許さないよ」
子は誰にも聞こえないようなさな声で呟いた。
「絶対に許してなんかやらない。……だけどね、あんたのこの顔だけは、棺桶のに持ってっちまいな」
子は乱暴に野菊を静さんの首元に差し入れると、く度だけをげ、に席へ戻っていった。
千は最にみ寄り、静さんの元に、冊の黒い監査ノートを静かに収めた。
そして、棺の蓋が閉じられた。
釘打ちの鈍い音が、さなホールに度響いた。
棺の際、棺の先を担いだのは修司だった。
い棺の角を肩にい込ませ、歯をいしばりながら、彼は母親の遺体を霊柩へと運び込んだ。その取りは、先ほど架を運んでいたよりも、ずっと確かだった。
葬を終え、骨壺を抱えて会館へ戻ってきたのは、午を回った頃だった。
参列者を見送り、静まり返った社で、私は最の類を片付けていた。遺言執の完報告と、公証役へ提する領収の控えだ。
ドアがノックされ、修司が入ってきた。
喪に着替え直した彼の顔には、隠しようのない疲労が刻まれていたが、その目元からはかつての濁りが消えていた。
彼は私の向かいの席に座ると、枚の類をテーブルのに差しした。
『取締役就任承諾 及び 株式譲渡契約』
「……千」
修司の声は、驚くほどく、静かだった。
「戻ってきてくれないか。妻としてじゃなくていい。この会社の専務として、俺の横にいてほしい。株式の半分はおに渡す。これからは、おのやり方で会社を変えてくれ。……俺には、おが必なんだ」