"「お前はただの手伝いだ」" 第15話
いシャツを汚す男
午分。
勤してきた社員たちや、のスタッフが、巻きにCホールのを見つめていた。誰も声をせない。異様な沈黙がそのを支配していた。
真奈美が怯えたような表で、修司の袖を引いた。
「しゃ、社……もうすぐです。お寺のも来ちゃいますよ。この、どうするんですか……? くに入りましょう、邪ひいちゃいます……」
修司は答えなかった。
ただ、濡れたアスファルトのに落ちた枚の百のびらを、じっと見つめていた。
に、彼のがいた。
首元に固く結ばれていた黒いシルクのネクタイを、乱暴に緩めて引き抜いた。それを、真奈美ののに無造作に押し付ける。
「社……?」
続いて修司は、仕ての良い特注の喪ジャケットを脱ぎ捨てた。裏にネーム刺繍が入った級な着が、面の砂利のにバサリと落ちる。
いワイシャツ姿になった修司は、両腕のカフスボタンをし、肘のまで袖を捲りげた。
そして、番にあった、さメートルを超える特注スタンドへ向かって歩きした。
「おい、倉岡!」
駆け寄ろうとした社員を、私はで制した。
修司は、鉄骨の骨組みを両で力任せに掴んだ。
「ぐっ……!」
さに耐えるように奥歯を噛み締め、でそれを抱えげた。スタンドのに結びつけられていた嚢が引きずられ、砂利をガリガリと削るい音が響く。
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「社! 何してるんですか!?」真奈美が鳴をげた。「それ、百万円以するんですよ!? 自分で運ぶなんて、見っともないです、やめてください!」
修司は真奈美の叫びを顧だにしなかった。
額に血管を浮きがらせ、いワイシャツの胸元を鉄骨の錆との液で黒く汚しながら、彼は歩、また歩とをへ踏みした。
運ぶ先は、本館のにある資材倉庫だった。
かつて、彼の父親がの棺を作業で作っていた、埃っぽい古い倉庫。
ドシャリと、くの通で鉄骨が置かれる鈍い音が響いた。
数分、戻ってきた修司の息はがっていた。額からは汗が流れ落ち、綺麗にえられていた髪は乱れ、ワイシャツの袖はと百ので黄く染まっていた。
彼は無言のまま、基目のスタンドを抱えげた。
誰のも借りようとしなかった。社員が伝おうと駆け寄るのを、「触るな!」とい号で撥ねつけた。
で、基ずつ。
い鉄の骨組みを抱え、暗い倉庫とホールを、何度も往復した。
往復。
最の基を運び終えた、計の針は午分を指していた。
Cホールのには、何つ遮るものがなくなっていた。古びた造の引き戸と、千が朝番に掃き清めた清潔な砂利だけが、静かにそこにあった。
修司は膝にをつき、荒い呼吸を繰り返していた。
汚れたシャツの胸元が激しくしている。
真奈美は、だらけになった修司の姿を、まるで得体のれない汚物でも見るような目で見つめていた。
「……信じられない」
真奈美のから、乾いた呟きが漏れた。
「こんなの……私のってる社じゃない……」
彼女は元に落ちていた帳を拾いげると、修司に声をかけることすらなく、逃げるように事務所の裏へとりっていった。度と戻ってくることはなかった。
修司はのついたで顔を拭い、度だけ私を見た。
その顔には、傲な経営者の仮面も、私を嘲笑った男の余裕も、欠片ほども残っていなかった。
ただ、母親のをにして、すべてを剥ぎ取られたの無力な息子の顔があった。