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"「お前はただの手伝いだ」" 第11話

鉄骨のテントを解体せよ

「何の真似ですか、これは」

私のたい声に、修司が苛ちをわにして振り返った。が彼のえられた髪を濡らし、額に張り付いている。

「見れば分かるだろう。の通夜に備えて、Cホールのに型の受付テントを設営しているんだ。器具も台入れる。に仮設の記帳所を列作れば、ホールに入れなくても百は捌ける」

「Cホールの使用と、名以の参列辞退は遺言で決まっています。テントの設営など許していません」

「許だと!? 誰の許がいるって言うんだ!」

修司が詰め寄ってきた。酒の匂いが微かに混じった息を吐きす。

「さっき松永議の秘から話があった! の通夜、会派の議員連を引き連れて弔問に来るそうだ。本の職にあるご職も、わざわざ方から拝みに来てくださるんだぞ! それを『名しか入れないから帰れ』と払いできるわけがないだろうが! 倉岡葬儀社が域でどう見られるか、おは本当に分かってないのか!」

「分かっていないのはあなたです」

「何だと!?」

その、敷の奥に黒塗りの級セダンが台、滑り込んできた。

ヘッドライトがのカーテンを切り裂き、設営のテントをく照らしす。からりてきたのは、具を着けた初老の男――元選の県議会鎮であり、倉岡葬儀社の支援者でもある松永議員本だった。

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「おや、修司君。変なことになったね」

松永が傘を差し、秘を従えて歩み寄ってくる。

修司の顔に、瞬にへつらうような営業用の笑みが張り付いた。

「松永先! こんな夜分にお元の悪い、わざわざ恐縮です。の通夜のことでし違いがございまして、今、先方をお迎えするための特設テントを急ピッチで……」

「松永先」

私は修司の言葉を断ち切り、議員のにみた。

「千、引っ込んでろ!」修司がい声で威嚇するように唸る。

私はそれを無し、スーツの内ポケットから、公証役の赤い割り印が鮮やかな公正証を広げて見せた。

「故・倉岡静の遺言執、千です。松永先、ご鄭なお遣いにはく謝申しげます。ですが、故はのい志により、切の儀礼参列および典、供のお受け取りを固く辞退しております」

松永が怪訝そうに眉を寄せた。

「辞退……? いや、しかし修司君からは、形式は族葬だが力者は別枠で受け付けると聞いていたが」

「それは倉岡葬儀社の営業の独断であり、故の遺志ではありません。もし先方がこのテントにお並びになれば、故の確な遺言を無してされた売名為として、この公正証と共に記録に残ることになります」

「おい、千! 貴様、何をデタラメを――!」

修司が私の腕を掴もうとした瞬、私はのキーをく掲げた。

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「修司さん。もしこのテントの設営を今すぐ止し、参列制限を厳守しないのであれば、私は遺言執の権限を使し、静さんのご遺体を今すぐこの会館から搬します」

現の空気が、凍りついた。

作業員たちのが止まり、カッパに粒が当たるパラパラという音だけが響く。

「搬だと……? どこへ持っていく気だ!」

「公の葬に併設された無償霊です。倉岡葬儀社との施委託契約をこので破棄し、の通夜も棺も、すべて公営施設でいます。元の訃報欄にもそう掲載させます。『倉岡葬儀社代表の母、会社の商業利用を拒絶し公営霊へ移送』と。それでもよろしいですか?」

修司の顔から、完全に血の気が引いた。

唇がに変し、喉がヒクヒクと痙攣している。松永議員のややかな線が、修司の背に突き刺さっていた。

「……修司君」松永が静かに傘を傾けた。「どうやら、庭内の見の致どころの話ではなさそうだな。々の名がそんなスキャンダルに使われては困る。の弔問は見わせてもらうよ」

「ま、松永先! 違います、これは妻が勝に――!」

「もう妻ではないと聞いているがね」

松永は淡に言い捨てると、踵を返してへと戻っていった。赤いテールランプがのにざかっていく。

修司はち尽くし、握りしめた拳を刻みに震わせていた。

額の血管が破裂しそうなほど浮きがっている。

「……千……お、絶対に許さないぞ……」

「パイプを片付けなさい」私は作業員のリーダーに向かって言った。「今すぐ、すべて撤してください」

修司は私を殺害現でも見るような目で見つめた、絞りすような声で吐き捨てた。

「……撤収だ! 全部バラせ!」

鉄骨が崩されるけたたましい音が、夜のに虚しく響き渡った。

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