"「お前はただの手伝いだ」" 第9話
夜勤務のタイムカード
油系溶剤のツンとした刺激臭が、腔の奥を刺した。
子は型アイロンを置いたまま、私の元からの先までを舐めるように睨みつけていた。その線には、数の歳をかけて澱のように溜まった毒が宿っている。
「名刺もせないのかい。……まあ、そうだろうね。『倉岡葬儀社』の社名入りの切れなんて、このに持ち込めるわけがない」
「……ご無礼をお詫びします」
「詫びて済むなら、私のこのを見てみな」
子はゴム掛けから両を引き抜き、私の目のに突きした。
関節は節くれち、指先は洗剤と溶剤のせいで赤黒くひび割れ、皮膚がい鱗のようになっていた。
「で夫をくした。解体現のから落ちて、即だったよ。労災がりるかどうかも分からない、元には通帳の残万と、学の子供が。そんなに病院へ乗り込んできたのが、あの倉岡静だ」
子はカウンターの引きしを荒々しく引いた。
奥から引っ張りしてきたのは、古びた輪ゴムで束ねられた、何枚もの片だった。
「これを見なよ」
カウンターに叩きつけられたのは、弁当と夜清掃のタイムカードの束だった。
印字されたは、どれも午から午、あるいは午から午。夜の枠に、赤いインクで隙なく打刻が並んでいる。
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「『ご主の最のれ台ですよ』『親戚の、みすぼらしい式をしたら葉ので泣かれます』。あの女はそう言って、私に百万の契約に判を押させたんだ。が真っになってた私は、言われるがまま実印を突いた。……それからだよ。葬儀ローンの返済に追われて、昼はクリーニング、夜は弁当のパック詰め。、の眠で働き詰めて、体を壊して、子供たちを学もさせてやれなかった!」
子の声が、換気扇の唸り音を圧して響く。
「あの女は途で気が咎めたのかね。毎万ずつ、名もかずに現留を送りつけてきやがった。、私が全額を返済し終えたに、その留を倉岡葬儀社のポストにそのまま叩き返してやったよ。『で私のを買えるとうな』ってを添えてね!」
私は何も言えず、を垂れるしかなかった。
静さんの通帳にあった毎万円の使途。ノートに挟まれていたの領収証。
すべてが符していた。
「名簿に私の名を入れた? ふざけるんじゃないよ!」
子は私が差しした通のを奪い取ると、両で息に引き裂いた。
ピリピリと裂ける音が、え切った作業に響く。子はつに破いた片を、元の汚れた排バケツのへ投げ捨てた。
「あの女の顔なんて、度と見たくもない。
んだならそのまま焼かれてになりな。倉岡のは、きててもんでても虫酸がるんだよ!」
子は背を向け、再び型アイロンを掴んだ。
激しい蒸気がプシューと吹きがり、彼女の丸まった背をく覆い隠した。