"「お前はただの手伝いだ」" 第8話
の領収証
ノートの背表の隙に、さくつ折りにされた片が挟み込まれていた。
引き抜いて広げると、それはの付が入った、倉岡葬儀社の古い複写式領収証の控えだった。
『領収証 百万円也
但し 故・敏夫儀 葬儀式代として
記正に領収いたしました
受領印:倉岡静』
領収証の裏には、静さんの私設座からの引きし票のコピーがホチキスで留められていた。額は毎万円。、欠かさず同じ座から引きされ、どこかへ振り込まれていた形跡があった。
そして、名の名簿の最、どうしても連絡がつかなかった唯の名。
『子』
所欄には、隣町の帯の片隅、古い町名が震える字でかれていた。
「……」
、私が嫁いできたばかりの頃の記憶を辿る。だが、倉岡の親族にも、取引先の名簿にも、そんな名は度もがったことがなかった。修司も美も「らない」と言い切っていた名だ。
計を見ると、午半を回っていた。はすっかりが落ち、たい霙混じりのがり始めていた。
私はノートと領収証を鞄に押し込み、階へりた。
事務所では、修司が真奈美を相に、まだの通夜の「会テント設営」の企てを声で指示していた。私と目がうと、修司は忌々しそうに線を逸らした。
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私は何も言わず、軽バンのキーをに取ってへた。
ワイパーが軋んだ音をててフロントガラスのを払う。をらせること分。川沿いの錆びたトタン根が連なるの奥に、目の板が見えた。
『ドライクリーニング商会』
ガラス戸の奥に、裸球の黄いがぼんやりと灯っている。
エンジンを止め、傘を差して引き戸にをかけた。チリンと錆びたベルが鳴る。
内には、烈な油系溶剤と湿った蒸気の匂いが充満していた。
カウンターの奥で、きなアイロン台に向かって背を丸め、蒸気を吹きげながら作業をしている女性がいた。のフリースのに分いゴム掛けを締め、荒れて赤に腫れがったで、黙々と作業の皺を伸ばしている。
「すみません、もう今の預かりは終わっ……」
女性が振り返り、濡れたコートを着た私を見て眉をひそめた。代半ば。く落ちくぼんだ目元に、隠しようのない過酷な歳の痕跡が刻まれていた。
「子さんでしょうか」
「そうだけど。あんた、誰だい。見ない顔だね」
私はくをげ、胸ポケットから名刺ではなく、静さんの名が記された通の面を取りした。
「突然の無礼をお許しください。倉岡葬儀社の、千と申します。……本未、倉岡静が急逝いたしました」
シューというスチームの音が、唐突に止まった。
子の持っていたアイロンが、台ので浮いたまま静止した。
内の空気が、急速に温度を失っていくのが分かった。女の顔から血の気が完全に引き、く張った唇が、わなわなと震え始める。
「倉岡……静……?」
子の喉から、絞りすようない声が漏れた。
「あの女が……んだのかい?」
「はい。今朝――」
私の言葉を遮るように、子はに持っていた型アイロンを、ガタンと音をてて台のに叩きつけた。
「んだ……? あの殺しがんだのかい!?」
子の瞳に、黒い炎のような憎悪が宿り、私を射抜いた。
「……私の族の血を吸い尽くして、私の夫の命をに換えたあの女が……やっとくたばったのかい!?」