"「お前はただの手伝いだ」" 第2話
午の非常呼
畳を突き抜けるような執拗なバイブレーションが、部の空気を震わせていた。
度切れても、数秒の空を挟んで再び鳴り始める。画面を覗き込むと、表示されていたのは「倉岡修司」の文字だった。
計の針は午分を指している。
私は通話ボタンを押し、に当てた。何も言わずに沈黙を守る。
受話器の向こうから聞こえてきたのは、障りなほど乱れた修司の荒い息遣いだった。
「……千か! おい、千!」
「何の用?」
「おふくろが倒れた。……いや、違う。さっき救急隊が来て、肺止を確認した。もう臓がいてないんだよ!」
背筋をたい針で刺されたような覚がった。
静さんが。
歳を過ぎても毎朝番に事務所の神棚のを替え、私が見積もりを値引きするたびに「甘い顔をするんじゃないよ」と言を叩き込んできた、あの義母が。
「……病院は」
「救命センターに搬送されたが、筋梗塞で蘇措置も無理だった。今、病院の霊だ。おい、千、すぐに会館へ来い。おふくろの遺体をうちのホールに搬送する。真奈美はまだ段取りが分かってないし、美も泣き叫ぶばかりで何の役にもたない。通夜の準備を今すぐ――」
でまくしてる修司の声を、私は静かに遮った。
「修司」
「何だ、くしろ! 親父の以の型葬にするぞ。寺院への連絡と、商会議所への訃報の文面を――」
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「昨の夕方、あなたが私に何て言ったか覚えてる?」
話の向こうが瞬、凍りついたように静まった。
「……は?」
「『ここはおとはもう何の関係もない所だ』。そう言ったのはあなたよ。鍵も返した。エプロンも置いてきた。私はもう、倉岡のでも、倉岡葬儀社のスタッフでもないの」
「お、実の母親同然だったおふくろがんだんだぞ!? こんなにまでを張る気か!」
「じゃないわ。事実を言っているの。内の葬儀なら、社であるあなたが仕切りなさい。失礼します」
私は画面をタップし、通話を切った。
そのまま端末の源を完全に落とした。
臓が激しく波打っていた。の先が急激にたくなっていく。
静さん。
私とあのは、世般で言う「仲の良い嫁姑」などでは決してなかった。
「千さん、あんたはが良すぎる。泣き落としに遭うたびに基本プランからドライアイス代を引いて、会社の利益をどこまで削る気だい」「親の代からの取引先には、それ相応の格式ってものがあるんだよ」
顔をわせれば仕事のやり方でぶつかり、私の淹れた茶にをつけることすら稀だった。
それでも、私が徹夜の搬送から戻ってきたけ方、湯のやかんの隣に、何も言わずに置かれていたい葛湯の湯気をいす。
午。
え切ったアパートの鉄のドアが、ドンドンと激しい音をてて叩かれた。
「千さん! お願い、千さん、けて!」
義妹の美の声だった。