みかん小説
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"学年五位の二浪息子" 第13話

留守番話の秒

に帰ると、直は居のテーブルに向かっていた。

に散らばっていた破片は綺麗に片付けられ、ゴミ袋にまとめられていた。

テーブルのには、森脇先から預かってきた県の希望調査票が広げられていた。

直はシャープペンを握り、じっと枠を見つめていた。私が隣に腰掛けても、ビクッと怯える様子はなかった。

「……先、ってた?」

「ってたわね。でも、ちゃんと退塾届、置いてきたから」

私が笑ってみせると、直はしだけ元を緩めた。その表を見たのは、本当に何ヶぶりだろうか。

「直、どこにするか決めた?」

直は、迷うようにペンの先をので泳がせた。そして、震えるで、ゆっくりと文字をき始めた。

第志望の欄。

消されることのない、太い圧。

『県等学 普通科』

き終えた、直はシャープペンを置き、私を見た。

「ここ……受けてもいい?」

「もちろんよ。、いい学じゃない」

「……あのね」

直はし照れくさそうに、線を泳がせながら言った。

「のパンフレット見たらね、写真部があるんだって。昔、お父さんの古いレフで遊んでたの、覚えてる? に入ったら、また写真、撮ってみたいなって……ずっとってたんだ」

胸の奥が、温かいもので満たされていくのをじた。

才能の限界を試すためじゃない。

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誰かに自するためでも、母親をさせるためでもない。

ただ「写真を撮ってみたい」。

そんな、ささやかで、瑞々しい、歳のの本当の望み。

「素敵ね。お父さんのカメラ、押し入れの奥にあるから、今夜探してみましょう」

そのだった。

居の黒い話が、甲い子音を響かせた。

ジリリリリ、ジリリリリ。

直の体が、反射にビクッとねた。ペンの先がを引っ掻く。

ナンバーディスプレイには、見慣れた塾の局番が表示されていた。

「なくていいわ」

私が受話器にを伸ばそうとするのを制すと、コール音は回鳴り響き、カチリと留守番話に切り替わった。

『ただいま留守にしております。発信音のに……』

ピーという子音が鳴る。

スピーカーから流れてきたのは、ノイズ混じりの、ひどく静かで徹な声だった。

『――です』

直の呼吸が止まった。

『佐伯さん。そして、直くん。聞こえているね』

先の声には、りも焦りもじられなかった。それがかえって、底れない気さを漂わせていた。

『直くん。お母さんは今、になって判断力を失っている。の都で、君の輝かしい未来をに沈めようとしているんだ。君が本気でなどという吹き溜まりを望んでいるはずがないことは、私が番よくっている』

受話器の向こうから、擦れの音が微かに聞こえた。

『は、県・私の最終願確認だ。学の職員で、私は待っている。調査をすに、必ず私のところへ来なさい。最のチャンスをあげる。君の才能を、こんならない茶番で終わらせてはいけない』

留守の録音を示すタイマーが、カチ、カチとんでいく。

『待っているよ、直くん。正しい選択をしなさい』

プツン、と無に回線が切れた。

部のに、苦しい沈黙が戻ってきた。

窓のは、すでに宵に包まれていた。の朝、すべてが決まる。

直はテーブルのの調査票を、じっと見つめていた。そのは微かに震えていたが、その瞳の奥には、にはなかったさなが、確かに灯っていた。

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