みかん小説
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"学年五位の二浪息子" 第6話

格者の黒板

願締め切りまで、あと。

曜の午、玄関のチャイムが控えめに鳴った。

インターホンを覗くと、紺のウールコートを着た先が、袋を提げてっていた。その隣には、見慣れない若い青が、背筋を伸ばしてっている。

ドアをけると、先はいつもの穏やかな笑みを浮かべて会釈した。

「突然お邪魔して申し訳ありません、佐伯さん。直くんに、し良い刺激を持ってきましてね」

招き入れられたは、狭いがの居に座った。

「紹介します。、私の塾からに学した、島くんです。今はので、徒会の役員も務めているんですよ」

島くんと呼ばれた青は、品にをげた。清潔のあるブレザーの胸元には、の伝統ある章がっていた。

「直くんのことは、先からよく伺っています。僕ものは模試の判定が振るわなくて、何度も諦めそうになりました。でも、先の言う通りに復習を徹底したら、本番で奇跡みたいにがいたんです」

島くんは、淀みのない、いかにも聡そうな調で語った。

「は素らしい学です。周りのレベルがいから、自分の限界をどんどん押し広げられる。直くん、君の数学のノートを先に見せてもらったけど、僕の同級でもあんな解き方をする奴は滅にいないよ。

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ここで妥協したら、君は、自分の本当の価値をらないままになる」

直は膝のに置いた両を、く握りしめていた。爪がくなるほど、く。

「……ありがとうございます」

絞りすような直の返事に、先は満そうに頷いた。そして、持参したそうな袋から、何冊かの分いプリントの束を取りした。

「これは島くんが実際に使っていた、直の対策特訓プリントです。過問の類題を私が独自に編纂しました。問。これを本番までに周すれば、記述試験の格ラインは確実に突破できます」

テーブルのに置かれたのは、まるでレンガのように苦しかった。

「先」

私は耐えかねてを挟んだ。

「あの子は……もうも同じところを目指して、ともに限界なんです。今は、もうしの丈にった学も野に入れて……」

「の丈、ですか」

先の声の温度が、すっとがった。

るのではない。ひどく残なものを見るような、れむような差しで私を見た。

「お母さん。が勝に子供の井を決めてはいけません。というのはね、度でも『逃げ』をってしまうと、そののでも壁にぶつかるたびに逃げる癖がつく。ここで全策をとってにかせたとして、直くんは本当に幸せになれますか? 『あの、もう歩踏ん張っていれば』という悔を、背負わせるおつもりですか?」

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「それは……」

「私は直くんのに責任を持つ覚悟で、ここに来ています」

先はちがり、直の肩にぽんと優しくを置いた。

「君の才能は、私が番よくっている。逃げなくていい。先が最まで緒にるから」

帰り際、アパートの階段をりていくを、隣の部の主婦が見送っていた。

「佐伯さん、な先ねえ。わざわざ卒業まで連れて励ましに来てくれるなんて、うちの子の塾じゃ考えられないわ。ありがたいわね」

所のの無邪気な賛辞が、の奥に突き刺さる。

世から見れば、先は絵に描いたような「徒の能性を信じる名教師」だった。銭を削り、休を返し、才能ある貧しいをどこまでも引きげようとしてくれる聖。

その完璧な善のに、私の違は、ただの「無で過保護な母親の音」として塗りつぶされていくのだった。

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