"八年分の源泉徴収票" 第2話
娘には絶対言うな
夜の過ぎ、玄関の鍵がく音がした。
夫の修司が、械油と湿った夜の匂いを纏って帰ってきた。
「ただいま。お義母さんの様子、病院から何か連絡あったか?」
修司はネクタイを緩めながら居に入ってきて、テーブルのに置かれたものを見てを止めた。
ダイニングテーブルの央に、分の源泉徴収票と、母の通帳が列に並べられていた。
修司の線が、のを泳いだ。
揺というよりは、「とうとう見つかったか」というような、く鈍い沈黙が部の空気を支配した。
「これ、どういうこと?」
私はったまま、できるだけ声を震わせないように尋ねた。
「お母さんに、毎万円ずつ料を払ってたの? も?」
修司は着を脱ぐを止め、線を落としたまま何も答えない。
「修司、聞いてるの? なんで私の親に、あなたが勝におを渡してるのよ。もしお母さんが活に困ってたなら、なんで私に相談してくれなかったの? 私、お母さんの娘だよ?」
責めるような調になったのは仕方がなかった。
私自、計を預かり、パートをしながら母の面倒を見てきたのだ。もし母のがりないのなら、夫婦で話しって仕送りをすべきだった。なぜ夫の会社の「料」という形を取らなければならなかったのか。
まさか、名義だけ借りて母にお遣いを横流ししていたのか。
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あるいは、税対策の架空件費か。
最悪の像がをよぎる。
い沈黙のあと、修司がく息を吐きした。
「架空の料じゃないよ」
「じゃあ何なのよ」
「お義母さん、本当に働いてるんだ。うちので」
「は……?」
わずを疑った。
「働いてるって……お母さんが? 歳の? あんなに膝が悪くて、週に回スーパーにくだけで疲れたって言ってるが、部品で何をするのよ!」
「類の理だよ」
修司は疲れたように子を引き、腰をろした。
「古い伝票の突と、昭の顧客台帳の理。週に、曜と曜の午だけ、ずつ来てもらってた」
冗談を言っているようには見えなかった。
修司の目は、仕事の話をするとき特の、真面目で融通の利かないをしていた。
「なんで……なんで私に言も言ってくれなかったのよ。もだよ? 度くらい、話すタイミングなんていくらでもあったじゃない!」
私の声がずり、涙がにじんだ。
夫に裏切られたことよりも、母が実の娘である私を完全に締めしていたという事実が、刃物のように胸に突き刺さっていた。
修司はテーブルのの源泉徴収票を枚、指先で静かになぞった。
「話せるわけないだろ」
「どうしてよ」
修司は私をまっすぐ見げた。その目には、私に対する微かな非難のようなが宿っていた。
「お義母さんから、泣きそうな顔で頼まれたんだよ。
契約するときに、絶対に条件にしてくれって言われたんだ」
「何を……?」
「『恭子には、絶対に言わないでくれ』って。『あの子にられたら、私はここに来られなくなる』って、をげられたんだよ」