"あんたの金なら一滴も飲まない" 第18話
パックのい朝
ヶの旬。私は週末を利用して、再び横浜から実を訪れていた。
母の腰の骨はすっかりくっつき、のなら杖なしでもりでけるほどに回復していた。
午半。
古い柱計がボーンとい音をてたが、玄関のチャイムは鳴らなかった。
私は寝着のにカーディガンを羽織り、居から玄関へ向かった。
引き戸をけてにてみる。
玄関脇のモルタル壁を見げると、そこには方形の暗い跡だけが残されていた。、緑の箱が打ち付けられていた所だけが、に晒されず、築の頃のるいベージュのまま角く切り取られていた。
箱は、の初めに牛乳のトラックが来て、綺麗に取りされていった。
たいの朝の匂いが、腔をくすぐる。
もう、いガラス瓶がに触れる音も、赤いセロファンを解く音も、このには響かない。
「美、寒いのに何突っってるんだい。く入っておいで」
台所から、母の張りのある声がんできた。
居に戻ると、油ストーブのでやかんがよい音をてて湯気をげていた。
台所のテーブルには、焼きたてのパンと目玉焼き、千切りキャベツの皿が並んでいる。そして、その央には、青とのデザインが見慣れた、リットルのパックの牛乳が置かれていた。
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所のスーパー「ライフ」のプライベートブランドの牛乳だった。
「お母さん、牛乳買ってきたの?」
私が席に着きながら尋ねると、母はフライパンを洗いながら、背越しに答えた。
「昨、協の帰りに自分で買ってきたんだよ。特売で百円だった。瓶のやつよりずっといし、み終わったら畳んでゴミにせるから楽でいいよ」
その声は、どこまでも現実で、あっけらかんとしていた。
母は器棚から、なんの変哲もない透なガラスのコップをつ取りし、テーブルに置いた。
パックの注ぎを慣れたつきでけると、トクトクトク、と気よい音をてて、い牛乳がコップを満たしていく。
母はコップのつを私のに押しやり、自分も反対側の子を引いて腰をろした。
「ほら、美もみなさい」
「うん」
私はたいコップを両で包み、んだ。
スーパーの牛乳は、あの宅配の瓶牛乳ほど濃ではなかったけれど、すっきりとしていて、驚くほど素直ながした。
「……美しいね」
「そうかい。普通のだよ、いやつ」
母はそう言って、自分のコップを元に運び、ごくごくと喉を鳴らして半分ほどみ干した。元についたい泡を指先でぬぐい、満そうに窓のの青空を見げる。
朝のが、障子を通して卓を柔らかく照らしていた。
父が遺し、見らぬがものあいだ繋ぎ止めてくれた朝は、もうどこにもない。
ここにあるのは、母が自分ので買いにき、自分ので注いだ、母自のあたらしい朝だった。