みかん小説
本棚

"夫が届出た私の失踪" 第12話

「あの部にっていいか」

付が変わり、曜の午を回った。

奈津は疲労困憊してリビングのソファで眠りに落ちていた。私は娘の肩にブランケットを掛け、、キッチンのスツールに腰掛けていた。

部のかりを落とし、元のスマートフォンの画面だけを見つめていた。

奈津のスマホではなく、私自の端末だ。

諦めかけていたその、のでい振がった。

メッセージアプリの通。

送り主は、『健』だった。

臓がねがり、喉の奥が引き攣った。

震える親指で通をタップする。

トーク画面に、健からのいメッセージが表示されていた。

『曜の夜、あの部にまだくのか』

息を呑んだ。

健は、っているという提を、もう隠そうともしていなかった。

私がどこへ通っていたのか、あの所が何なのかを、すべてったで問いかけてきている。

私は迷わずに打ち込んだ。

『く』

送信。

今度はすぐに既読がついた。

画面の部に、鉛のアイコンが点滅する。健が文字を打ち、消し、また打っているのが分かる。

祈るような気持ちで、その点滅を見つめ続けた。

数分、届いたメッセージは、予もしなかった言葉だった。

『度、っていいか』

文字が、網膜に焼き付いた。

っていいか。

健は、私を責めてるために自宅へ乗り込んでくるのではない。

広告

鷺沼の自分の部に私を呼びつけるのでもない。

私がの活から逃げすために作った、あの万千円の、畳の部に来たいと言っているのだ。

指先が震えた。

あの部は、私の聖域だった。誰にも踏み込ませず、誰の線も気にせず、ただで息をするために作った、誰にも言えない秘密の殻だった。

そこに、夫を招き入れる。

それは、私の欺瞞も、孤独も、醜い逃避も、すべてを健のに晒すことをしていた。

けれど、逃げるはもう塞がれていた。

健も私も、それぞれに逃げを作った結果が、この惨状なのだ。

私は画面に指をらせた。

『に、待ってる』

送信ボタンを押すと、すぐに既読がついた。

それ以、健からの返信はなかった。

ただ、その「既読」の文字が、交わされた約束のみとして、夜の静寂に沈んでいった。

翌朝、曜のがリビングに差し込む頃、奈津が荷物をまとめた。

「戻るの?」と聞くと、奈津はい表のまま頷いた。

「曜から、どうしても休めないゼミがあるから。……それに、ここにいても、私がに入ったらが余計に話せなくなるでしょ」

玄関でスニーカーを履きながら、奈津は振り返った。

その顔には、昨の激しいりは消えていたが、びた、し寂しげな諦が漂っていた。

「お母さん」

「なぁに」

「で、ちゃんと話しなよ。

お父さんので、良い奥さんの顔なんてしなくていいからさ。……どっちが悪いとか、そういうの、もういいから」

「……うん。分かってる」

「じゃあね」

奈津はさくを振り、エレベーターをりていった。

残された部は、驚くほど広くて、静かだった。

曜の夜。

あと、。

私は自分の寝に戻り、クローゼットの奥から、あのアパートの鍵を取りした。

さな、の鍵。

この鍵が、の結婚活の終わりを告げるのか、それとも別の何かの始まりになるのか、私にはまだ分からなかった。

ただつ確かなのは、もう誰も、方のふりをすることはできないということだけだった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: