"消えた夫と十二時十分の弁当" 第11話
自分で聞きなさい
曜。正午。
私は注文端末の画面を見つめていた。
臓の鼓が、喉の奥でく脈打っている。
奈央は今朝、私が作った朝にもをつけず、だけをんで登していった。テーブルに残されたラップのかかった卵焼きが、私の胸を鋭く刺していた。
分。
予通り、プリンターが滑りした。
【Aセット】
・梅干し抜き
お届け先:〇〇スクエアビル 1階ロッカー
備考:今はですね。傘、役にちました。
レシートの文字を見て、私はさく息を呑んだ。
備考欄に、初めて活の言葉が混じっていた。
は朝から梅らしいしとしととしたがっている。
曜の朝、彼が最に持ってた折りたたみ傘のことだ。
修司は、私を探っている。
あの曜、あんなに私を拒絶し、逃げしておきながら、私のりの温度を確かめるように、注文の備考欄を使ってそっと指先を伸ばしてきているのだ。
卑怯だ、とった。
直接顔をわせる勇気も、話で声を聴く覚悟もないくせに、弁当の備考欄という全な隙から、私との繋がりを繋ぎ止めようとしている。
私はその、何もかずに弁当を送りした。
翌の曜。
分の注文には、またしい言葉が添えられていた。
【Aセット 梅干し抜き】
備考:先週のから揚げ、奈央はべましたか。
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胸ので、たいりがを噴いた。
奈央の名を、この男が備考欄の文字として打ち込んでいる。
娘がどんないで泣き、どれほど傷つき、父親のそのものを拒絶しようとしているかもらずに、まるでくから娘の様子を気にかける『優しい父親』のつもりでいるのだ。
私は注文伝票を握りしめ、カウンターの引きしから油性ペンを取りした。
いつものように梅干しを抜き、玉子焼きを切れ入れた弁当箱の蓋を閉める。
そして、蓋のに貼る透なフィルムテープのに、太い文字で、ただだけき殴った。
『自分で直接、奈央に聞きなさい』
それ以は、何もかなかった。
体調を気遣う言葉も、どこにいるのかを問いただす言葉も、すべて削ぎ落とした。
私はもう、このと娘のあいだを取り持つクッションにはならない。
父親としての責任から逃げし、裏に隠れながら、妻の料理という全基に片を突っ込んでいるこの甘えを、絶対に許してはならない。
配達員がの、バイクでっていった。
私は厨の勝にち、鉛の空を見げながら、じっと待った。
午。
スマートフォンを取りし、デリバリーの舗管理画面をく。
ステータスは『配達完』になっていた。
彼があの文字を見たはずだった。
私のたく切り放すような文字を、あの暗いロッカーので、で読んだはずだった。
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そして、そのを境に、異変が起きた。
曜。
分になっても、端末のアラームは鳴らなかった。
半になっても、になっても、械は静まり返ったままだった。
曜、曜。
、度も注文は入らなかった。
「……、注文、止まったわね」
曜の昼過ぎ、仕込みを終えた吉田さんが、気まずそうに声をかけてきた。
「ええ。止まりましたね」
私の声は、驚くほど平坦だった。
恐怖がなかったわけではない。あのたいを突きつけたことで、修司が本当にどこかへ消えてしまい、度とがかりが掴めなくなるのではないかというが、夜になると胸を締め付けた。
けれど、悔はなかった。
毎お弁当を作り続けることは、優しさではなかった。
それは修司の逃を私が伝い、族の痛みを引かせるための、最も残酷な共犯関係だったのだ。
彼がもし、あの文字を見て完全に連絡を絶つのなら、私たちのはそこまでのものだったのだと、腹を括るしかなかった。