"消えた夫と十二時十分の弁当" 第6話
引きしのレシート
喫茶をて、い取りでに戻ったのは午を回った頃だった。
勝のドアをけると、階からドタバタと乱暴な音がりてきた。
制のスカートを翻して現れた奈央のには、見覚えのあるいの束が握りしめられていた。
「……奈央、学は?」
「午でテスト終わったから。それより、これ何?」
奈央がダイニングテーブルのに叩きつけたのは、私がキッチンの奥の引きし、売台帳の底に隠しておいたデリバリーの注文伝票だった。
【Aセット 梅干し抜き 玉子焼き+1個追加】
【若鶏のから揚げ ※届けなくていいです】
【玉子焼き、今は増やさないでください】
のレシートが、扇状に散らばった。
娘の肩が、激しいりで刻みに揺れていた。
「お母さん、これ、やっぱりお父さんなんでしょ」
私は靴を脱ぐのも忘れ、玄関にち尽くした。
「奈央、それは……」
「隠してたの? お父さんがきてて、毎お母さんのご飯べてること、私に黙ってたの?」
「あなたを混乱させたくなかったのよ。まだ、本当に修司なのか、どうしてこんなことをしてるのか、何も分かってなくて……」
「分かってるじゃない!」
奈央が叫んだ。
歳の娘の喉から絞りされた声は、破裂しそうな鳴にかった。
「お父さんは、きてる。事故に遭ったわけでも、誰かに連れられたわけでもない。
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自分で勝にてって、くのビルに隠れて、お母さんに毎お弁当を作らせてる。……何なのそれ? バカにしてるの? 残された私たちが、どれだけ惨めないをしてるか分かってんの!?」
「奈央、お父さんも会社でいろいろあって……」
「だから何!?」
奈央はテーブルの端を激しく両で叩いた。
「会社で辛かったら、族を捨てて逃げていいの!? 私の推薦入試、来なんだよ? 面談の類、保護者の署名欄、誰がくの? 所のに『お父さん、まだ見つからないの?』って聞かれるたびに、私がどんな顔して笑ってるかってるの!?」
涙が奈央の頬を伝い、に落ちた。
娘が泣いているのを、私は修司がいなくなってから初めて見た。
ずっと平気なふりをして、父親を切り捨てるようなたい言葉ばかり吐いていた奈央が、本当は番傷つき、番怯えていたのだ。
「もう作らないでよ……」
奈央は袖で乱暴に涙を拭いながら、散らばったレシートを踏みつけるようにして言った。
「なんで毎、言われた通りに作って届けてんの? お父さんは歳だよ? 歳の子どもじゃないんだよ! ご飯作ってあげてるから、お父さんは『これでいいんだ』って甘えてるんじゃないの!? お母さんがそうやって何でも世話焼いて、何でも許すから、あのは平気で逃げてられるんだよ!」
胸を刃物で抉られたような痛みがった。
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「……放っておけないのよ」
「自業自得じゃない! 飢えにすればいいんだよ、そんな無責任な!」
「奈央!」
「本当のことでしょ! に帰る気がないなら、もう赤のだよ! お母さんも目を覚ましなよ!」
奈央は階へ駆けがり、ドアを激しく閉めた。
鍵のかかる乾いた音が、階まで響いた。
散らばったレシートの真んで、私はち尽くしていた。
娘の言葉は、残酷なほど正しかった。
私はなぜ、毎彼のために玉子焼きを焼き、梅干しを抜いていたのだろう。
を確かめたいから?
それとも、事を作り続けることでしか、彼との繋がりを維持できないと怯えていたからなのだろうか。
計を見る。午半。
の昼。曜。
失踪してから、ちょうど目。
私はに散らばったレシートを枚ずつ拾い集め、きつく握りしめた。
もう、画面の向こうの彼に飯を運ぶのは終わりだ。
娘をここまで泣かせた男のに、私はたなければならない。