"消えた夫と十二時十分の弁当" 第3話
曜のから揚げ
曜も、同じだった。
昼の分。
まるで計ったような正確さで、端末のブザーが鳴る。
【Aセット】
・梅干し抜き
・玉子焼き+1個追加
お届け先:〇〇スクエアビル 1階ロッカー
備考:今も同じで。
誰かが悪質な悪戯をしているのではないか。
あるいは、修司のアカウントを拾った誰かが、面半分で注文を繰り返しているのではないか。
警察にも相談したが、「本の確認ができる材料ではありますが、ロッカーの防犯カメラの示には管理会社の許と相応の続きが必でして」と、相変わらず腰はかった。
夕方、部活帰りの奈央がの勝から入ってきた。
の娘の顔には、隠しようのない苛ちとが張り付いている。
「お母さん、お父さんのこと、何か分かったの?」
カウンターの隅で、私は注文伝票の束を握りしめたまま俯いた。
「……会社のくのロッカーに、お父さんのいつものお弁当の注文が届いてるの。今も届いた」
奈央は目を丸くし、それから信じられないものを見るような目つきで私を睨みつけた。
「は? 何それ。お父さん、きてるの?」
「たぶん。でも、話にはないし、に帰ってくる気配もなくて……」
「きてて、お母さんのご飯べてるのに、に帰ってこないってこと?」
娘の声が鋭く裏返った。
「何考えてるの。
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警察にも会社にも迷惑かけて、私たちがどんないでここにいるかっててそんなことしてんの? わかんない。もし自分で逃げてるんだとしたら、もう探さなくていいよ」
奈央は履いていたローファーを放りすように脱ぎ捨て、階の自分の部へ駆けがり、ドアを激しく叩きつけた。
静まり返った内で、私はえたフライヤーを見つめていた。
奈央の言う通りだった。
もしこれが本当に修司の志なのだとしたら、彼は族を捨てたのだ。
なのに、なぜ。
なぜ、私が作った飯を、わざわざ毎注文してべているのか。
そして迎えた、曜。
修司には、続けてきた習慣があった。
毎週末、曜の夜になると、彼はうちので揚げる鶏のから揚げを、袋に入れて持ち帰り、ビールをむのが何よりの楽しみだった。
奈央がさい頃、「お父さんの曜のから揚げ」と呼んでびしたのが始まりで、娘が期に入って会話が減ってからも、修司は曜だけは必ずから揚げをぶらげて帰ってきた。
半を過ぎたあたりから、胸の悸がおさまらなかった。
曜の分。
もし、彼がこの注文を寄越すのだとしたら。
ピピピッ、と無慈なアラームが鳴った。
注文が滑りてくる。
私は息を止めて、印字された文字を凝した。
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【Aセット】
・梅干し抜き
・玉子焼き+1個追加
【若鶏のから揚げ(3個入り)】
お届け先:〇〇スクエアビル 1階ロッカー
備考:から揚げは届けなくていいです。
膝から力が抜け、私はそのにへたり込んだ。
から揚げは、届けなくていい。
代はオンラインで決済されている。
修司は、から揚げの代を払い、それを届けるなと言っているのだ。
彼だ。
絶対に修司だ。
彼は曜であることをっている。
奈央がから揚げを待っていることを覚えている。
けれど、それを自分のでに持ち帰る資格が、今の自分にはないとっているのだ。
「修司……なんでよ……」
ステンレスの調理台に額を押し当てると、堪えていた涙がとめどなく溢れて、止まらなくなった。
彼はきている。すぐくにいる。
族のことを忘れてなどいない。
それなのに、透のように壁の向こうに隠れて、私に自分のをらせるためだけに、毎この弁当を頼んでいるのだ。
「、しっかりして。これ、作るの? 作らないの?」
吉田さんが私の背をさすりながら、困惑したように聞いた。
「……作ります」
私は涙をの甲で乱暴に拭い、ちがった。
梅干しを抜き、玉子焼きを余分に切れ入れ、から揚げは揚げたてのものをパックに詰めて、レジの横の棚に置いた。夜、奈央にべさせるために。