"結婚式を欠席した家族は、私の夫をただの現場作業員だと思っていた" 第14話
潮が吹き抜ける広な敷には、巨なタワークレーンが何基もそびえち、数千の作業員たちが活気ある掛け声を響かせっていた。 仮囲いの通用ので待っていると、ヘルメットを被り、図面ケースを脇に抱えた彦が、数名の若い技術者を引き連れて歩いてくるのが見えた。
「田辺、来週から台の響でがくなる。50メートル以の作業は、速10メートルを超えた点で即座に止しろ。期の遅れは俺が発注者と交渉する。命より優先される程なんざ、この世につもねえぞ」
「はい! 解しました、社!」
若社員たちが直で敬礼する。彦はヘルメットの鍔を押しげ、首に巻いたタオルで汗を拭いながら、私に気づいて破顔した。
「裕子、わざわざ来てくれたのか」
紺の作業着の膝には、今も現のセメントのい擦れ跡がしっかりとついていた。 建設持株会社の代表取締役社——その華々しい肩きとは裏腹に、目のにいる夫は、喫茶で初めて会ったあのと寸分違わぬ、現の命を守る実直な職の差しをしていた。
私たちは現の片隅にある休憩用のベンチに並んで座り、お弁当の蓋をけた。 卵焼きと、鶏の唐揚げ、そしてきなおにぎり。
「うまいな。裕子の飯をうと、午の現も気が入るよ」
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彦はきなおにぎりを頬張りながら、嬉しそうに目を細めた。 見げるのからは、職たちが全帯のフックを掛け替える「カチャリ、カチャリ」という気よい属音が、初のに乗ってり注いでいた。
私の勤める港品の総務課でも、毎集まるヒヤリハット報告の集計作業が続いていた。 以よりも、報告の1枚1枚がおしく、尊くじられる。このの向こうに、誰かの命を必に守り、無事に族のもとへ帰そうとしている温かいがあるのだとっているからだ。
「彦さん」
「ん?」
「私ね、やっぱり『普通』でよかった。見栄を張ったり、を見したり、誰かを踏み台にしてに入れる特別ななんて、ちっとも欲しくない。毎真面目に働いて、切なを守って、こうやってお弁当を緒にべる……この普通の毎が、私にとって番の宝物です」
彦は私のをそっと包み込んだ。 太くて、節くれだっていて、温かい、私の夫の。
「ああ。俺も裕子と同じだ。これからも現でにまみれて、おと緒に普通の、でも最に幸せな毎を積みねていこう」
く広がる青空に向かって、巨なビルの鉄骨が真っ直ぐに伸びていた。 その頑丈な骨組みを元で支えているのは、名もなき職たちの流す汗と、互いをいやる命綱の温もりだ。
私たちはちがり、をつないで歩きした。 作業着の夫と、普通の私の、しく始まった温かなのを、どこまでもを向いて歩いていく。