"優先的に妹さんと" 第1話
優先に妹さんと
ホテルのティーラウンジは、曜の午ということもあってほぼ満席だった。
い井に反射するティーカップの擦れう音と、く抑えられた談笑の声。窓際の席に案内された私たちは、約束のの分に腰をろしていた。
私、由里は歳。元の信用庫で融資事務の仕事をしている。
向かいに座る姉の真紀は歳。、元夫とので子どもを持つか持たないか、親と同居するかどうかといった活の細かな擦りわせがつかないまま、静かに話しって婚した。それ以来、実の母から「もう度くらい誰かとやり直せないのか」と急かされ続け、ようやくい腰をげて老舗の結婚相談所に登録したのが先のことだ。
「ちょっと、化粧直してくるね」
真紀がさなハンドバッグを抱えてちがった。ベージュのレースがあしらわれたブラウスは、昨の夜、私が「その方が顔がるく見えるから」と選んだものだった。
「慌てなくていいよ。まだ分あるから」
私が声をかけると、真紀はし張った笑みを浮かべて通の奥へ消えていった。
テーブルに残されたつのグラスの氷が、チリとさな音をてて溶ける。
私は子の背にもたれ、スマートフォンで曜の業務予定を確認していた。
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姉が席をしてから分も経っていなかったとう。
「あの、失礼ですが」
落ち着いた、しめの声がからってきた。
顔をげると、紺のスーツを端正に着こなした男性がっていた。く刈り揃えられた黒髪に、縁の細い鏡。事に相談所から届いていたプロフィール写真通りのだった。相澤誠さん、歳。品メーカーの物流管理部で働いていると聞いている。
彼はこちらの顔をじっと見つめると、張り詰めていた肩の力をふっと抜き、目に見えて堵の息を吐きした。
「よかった。今来られるのが、お姉さんの方じゃなくてしました」
言葉のが、すぐにはに入ってこなかった。
「え?」
「瀬さんから話は聞いています。お姉さんではなく、あなたとお話しできる段取りになっていたんですね」
相澤さんはそう言って、穏やかな笑みすら浮かべながら向かいの空いた席にをかけた。
全の毛穴がざらりと逆つような覚があった。私は背筋を伸ばし、子を引こうとする彼のをで制した。
「お待ちください。違いです」
「違い?」
「私は妹の由里です。今ここでお会いするお見いの相は、姉の真紀です」
相澤さんのきがぴたりと止まった。鏡の奥の目が瞬きを繰り返し、表が急速に張っていく。
「ですが……相談所の瀬さんから、事にこの控えを渡されていまして」
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彼は内ポケットからつ折りにされた枚のA4用を取りし、テーブルのに広げた。
結婚相談所の正式な類だった。央には、し顎を引いて微笑む真紀の写真。齢、最終学歴、事務職という職業、趣の欄に並ぶ「読」「美術館巡り」という文字。どこからどう見ても、姉の登録シートそのものだった。
だが、番の特記事項の欄に、細いボールペンできの文字がき加えられていた。
『もし妹様もご同席されるようでしたら、優先に妹様ご本とお話しください』
私はその文字を指先でなぞった。った、見覚えのあるし角ばった跡。相談所のであり、母の学代からのでもある瀬子の字だった。
「これ、誰がいたんですか」
私の声がくなっているのを、自分でも自覚できた。
相澤さんは眉根を寄せ、困惑を隠せない様子で答えた。
「瀬さんです。お姉さんご本のいご希望で、実際の判断はすべて妹さんがなさるから、最初から妹さんと疎通を図った方が話がいと伺っていました」
「姉が、そんなこと……」
言うはずがない、と言いかけて言葉が喉につかえた。
本当に言っていないだろうか。姉が自分でそんな依頼をするはずはない。けれど、なぜ瀬さんはこんなメモを残したのか。
「お待たせ、混んでてちょっとかかっちゃっ……」
戻ってきた真紀の音が、私たちのテーブルので止まった。
真紀は元のと、ち尽くしている相澤さんを交互に見つめた。唇には、塗り直したばかりの控えめなピンクのルージュが微かにっている。
私は無言のまま、テーブルののを真紀のへと滑らせた。
真紀の線が、きの最のに落ちる。
次の瞬、姉の顔からさざ波が引くように血の気が引いていった。