"不妊扱いされたサレ妻と、91歳の秘密" 第7話
おもお荷物の老がいた方が、寂しくなくてちょうどいいだろ?」
で両親をくした自分を引き取り、をにして育ててくれたはずの祖母を、「ボケ老」「お荷物」と切り捨てる男。 しみも、悔しさも、すべてを通り越して、私の胸のにはただ徹な虚無だけが横たわっていた。
「おばあちゃんを無理やり連れてていくなんて、そんな筋の通らないことできるわけないでしょう」
「は!? 妊の寄虫のくせに儘言ってんじゃねえよ! 子持ちになる夫婦を気遣って、お荷物はお荷物同士、緒にさく肩を寄せって暮らしていけって言ってんだよ!」
冒のあの言葉が、再び信弘のから放たれた。 私は静かにちがり、リビングのサイドボードの引きしへと歩み寄った。 あらかじめ取り寄せておいた緑の枠線の用——婚届を枚取りし、テーブルのにピシャリと叩きつけた。
「もう、あなたと交わす言葉は言もないわ。これ、婚届よ。すぐに署名と捺印をして。役所への提は私がしておくから」
「お、おい! どこくんだよ!」
背から響く信弘の制止の声を完全に無し、私は自へと向かった。 クローゼットからスーツケースを引きし、当面の着替えと通帳、印鑑、の回りの必需品だけをく詰め込む。
「今すぐ、このをていくわ。
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分秒たりとも、あなたと同じ空気を吸いたくないの。きな荷物は、あなたが仕事でいない帯に運びすから」
「へっ、殊勝ながけだな! おい、そのにばあちゃんの荷物も全部まとめて連れてけよな!」
どこまでも自分に甘く、自分にとって都のいい世界しか見ようとしない男。 私はその醜悪な声を背に浴びながら、振り返ることなく玄関のドアをけた。 夜のたい気が、照った頬を突き刺す。 をて数歩歩いたところで、抑え込んでいた涙が次から次へと溢れし、止まらなくなった。けなくて、悔しくて、悔の涙が夜を濡らす。 だが、私は拳をく握りしめ、涙を拭った。 (これで終わらせるものですか……! 信弘、そしてさやか。自分たちがしでかした裏切りの代償を、必ず骨の髄まで払わせてやるわ!)
夜にをびした私が、すぐにしい賃貸物件を見つけられるはずもなかった。 私は駅のタクシーに乗り込み、内のしれにある、然温泉が併設されたビジネスホテルへと向かった。 チェックインを済ませ、通されたシングルルームのベッドのにスーツケースを置く。 静まり返った部。 計の秒針がむかすかな音だけが、に届く。 信弘の鳴り声も、理尽な事の求も、ピリピリとした緊張もない、完全な静寂。
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数をそのホテルで過ごすうちに、私のは驚くほどの落ち着きを取り戻していった。 おばあちゃんがいない寂しさはあったものの、それ以に「信弘がいない」という事実が、私のを羽のように軽くしていたのだ。 えば結婚してからの、私は毎毎、夫の顔ばかりを窺ってきてきた。 帰宅すればソファに踏んぞり返り、いかに自分が会社で変ないをしてきたかを延々と語り聞かせ、料理の付けがいだの濃いだの、呂の湯加減がぬるいだのと難癖をつけられる々。 その苦しい呪縛から解放された今、私はまるでしくまれ変わったかのような、清々しい解放に包まれていた。 昼からホテルの温泉にゆったりと浸かり、湯がりにたいお茶をみながら、ベッドのでゴロゴロとを伸ばす。の底から毒素が抜けていくようだった。
しかし、そんな穏やかなは、唐突に破られることとなる。 ベッドのサイドテーブルのに置いていたスマートフォンが、けたたましいバイブレーションと共に震え始めたのだ。 画面を覗き込むと、そこには【信弘】の文字が表示されていた。 (……今更、何の用よ) い嫌悪を覚え、私は画面を見つめたまま放置した。 通話が切れる。だが、秒も経たないうちに、再び激しい振が始まった。
切っては鳴り、切っては鳴る。分おきに執拗に繰り返される着信。 いわゆる、狂気の「鬼」