"寝室にカメラを隠した夫と1億8000万円の遺産" 第21話
その声はいつのにか、私自の声のようにので響くようになっていた。
だから、私が本当に回復するために必だったのは「私は絶対に違わない」とい込むことではない。
だから違えることもあるし、疲れて泣くもあるし、うっかり忘れることもある。
それでも、自分のの選択は自分で決めていいのだ。
そうからえるようになることが、私にとっての真の回復だった。
ある夜、私は度もベッドのを覗き込むことなく、朝までい眠りにつくことができた。
朝のので目覚めた、私は初めて自分が本当にあの暗から抜けせたのだと気づいた。
しいマンションでの活が始まり、というが流れた。
のがよく吹き抜ける週末の朝、私は部の窓をきくけ放った。
こので、私の活はすっかり見違えるように穏やかなものになっていた。
仕事はさらに責任のあるを任されるようになり、輩の育成にも携わっている。
休はで美術館へを運んだり、気の置けない友とランチを楽しんだりする余裕もまれた。
自分の稼いだおで自分の好きなようにを使い、誰の目も気にせずに笑うことができる。
叔母から受け継いだ財産は、信頼できる専のアドバイスを受けながら全で堅実な運用を始めている。
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折、正斗のそのについての噂をにすることはあった。
彼は結局額の借を返済しきれずに自己破産の続きを取り、今では細々と雇いの仕事をしながら親族とも疎になっているらしい。
義母の智子さんも、自だった息子が破産したことで周囲からややかな目で見られ、すっかり孤してしまったという。
彼らが失ったものは銭やだけではない。
周囲からの信用、族としての絆、そして何より誠実にきるというとしての尊厳だ。
しかし、そのらせを聞いても私のにびや優越が湧くことはなかった。
彼らの選んだ悪の結果がどうであれ、もう私のにはミリにも関わりのないことなのだ。
今は、ヶに度の定期清掃を業者に頼んでいただ。
インターホンが鳴り、モニターに映ったのは、あのの寝でカメラを見つけてくれた坂本さんの姿だった。
「島さん、お久しぶりです」
「坂本さん、今もよろしくお願いします」
私は笑顔でドアをけ、彼を部のに招き入れた。
彼がこのマンションの清掃を担当するのはこれで回目になる。
最初のこそ、彼と顔をわせるとあのの恐怖がフラッシュバックしてし構えてしまったが、今ではすっかり顔馴染みだ。
「しいお部は当たりが良くて、本当に気持ちがいいですね」
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坂本さんは際よく具を広げながら、るい声で言った。
「ええ、ここでの活が番私にっている気がします」
回りの清掃が終わり、坂本さんは寝へと向かった。
ここにあるのは、しく買い直した用のシンプルな製ベッドだ。
坂本さんがベッドの端を持ちげ、壁から引きそうとした瞬。
私の体は無識のうちに、しだけくなった。
条件反射のように、臓がトクンとつきくねる。
経っても、まだあのの記憶が完全に消えったわけではないのだ。
坂本さんはベッドのを覗き込み、何かを見つけたようにきを止めた。
「あ、奥さん」
その声に私は息をみ、のすくむいで歩だけづいた。
「これ、落ちてましたよ」
坂本さんがを伸ばして持ちげたのは、黒い箱でも配線でもなく、私が数に探していた片方だけの靴だった。
「あ……」
私は数秒その靴を見つめた。
そして緊張の糸がプツンと切れ、の底から笑いが込みげてきた。
「それ、ずっと探してたんです。こんなところにあったんですね」
「じゃあ、見つかってよかったですね」
坂本さんも私の様子を見て、ほっとしたように笑い返してくれた。
ベッドのにあるのはしの埃と、私のなくした靴だけ。
それがこんなにもできる景になるなんて。
の暗ので震えていた私は、像もできなかっただろう。
清掃が終わり、ピカピカになった部を見渡しながら、私は温かいお茶を淹れた。
湯呑みからち昇る湯気の向こうに、このののりが静かに浮かびがる。
正斗は億千万円の資産をに入れるために、私を法に無能力にしようとした。
しかし、彼が本当に欲しかったのは、おそのものに触れるための権限だった。
そのために必だったのは、私を物理に縛りつけることでも暴力で脅すことでもなく、私自に『私はもう自分でできない』とわせることだった。
私ののに潜り込み、私の自己決定権を根本から奪おうとしたのだ。
だから、私が最にあの男から取り戻した番きなものは、おでもでも株でもなかった。
それは、何かを決めた、自分のから聞こえる『本当にこれでいいの?』というの声に、自分自で『うん、これでいい』と答えられる覚だった。
私はお茶をみ、窓のの青空を見げた。
今はこれからしを伸ばして、しい靴を買いにこう。
どこへくか、何を買うか。
全て私自が決める。
私のは、もう誰にも奪わせない。