"四枚の余った名札" 第15話
野県の公
教のは、油ストーブの独特の匂いが充満していた。
教壇のにつのパイプ子が並べられている。央に結、その隣に私、向かい側に佐藤教諭が座った。
佐藤教諭は元の調査票と成績表を交互に見比べながら、咳払いをつした。
「まず、学期の内申点と実力テストの結果からですが……結さん、全体に非常に定しています。都内の位公も分に射程圏内ですよ」
教諭がプリントを指し示し、私に向かって頷いた。
以の私なら、ここで即座に偏差値や通学を質問していただろう。だが、私は何も言わず、ただ結の横顔を見つめていた。
結は膝のでスカートのを固く握りしめ、度も顔をげようとしなかった。
「それでは、本題の志望についてですが」
佐藤教諭がバインダーからしい用を取りした。
「結さんから事に提していただいた仮の調査票には、都内の都が第志望としてかれていましたが……結さん、この内容でお母様にもお話ししてよろしいですか?」
教のに、い沈黙が落ちた。
ストーブののやかんが、シューと細い蒸気をてている。
結の肩が、さく震えていた。彼女は握りしめていた拳をゆっくりとき、制のブレザーの内ポケットにを入れた。
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取りされたのは、つ折りにされ、端が擦り切れた枚のプリントだった。
結は震える両でそのを広げ、教壇のに滑らせた。
佐藤教諭が驚いたように眉を寄せ、を乗りした。
そこにかれていた学名は、都内のではなかった。
『野県曽原等学 美術・芸科(全寮制)』
「……野?」
佐藤教諭がわず声を漏らした。
「結さん、これは……都の学ですよ。しかも全寮制の……」
私の臓が、たいに浸されたように縮みがった。
野。京から特急を乗り継いでもくかかる、あいの町だ。美術の芸科。そして、全寮制。
歳でをて、誰もりいのいない所で暮らす。
(なんで……)
喉の奥から、本能な叫びが競りがってきた。
『そんな話、度も聞いてないわよ』
『どうしてそんなくへくの?』
『京にだって、美術のコースがあるはあるでしょ』
『で暮らせるわけがないじゃない』
過の私の言葉が、銃弾のようにのを駆け巡った。娘を守るためという義名分を掲げた、母親の勝な支配欲。
私は息を吸い、唇を噛んだ。
隣に座る結は、体を張らせ、まるで激しい平打ちを待つ子どものように、目をぎゅっと閉じていた。
(この子は、ずっとこれを言えなかったんだ)
を殴られたような衝撃だった。
結が者面談のプリントを隠し、織さんの名札を準備していた本当の理由。
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それは、母親が忙しいからだけではなかった。
この志望を打ちけた、母親がごなしに否定し、取りってくれないことをっていたからだ。どうせ最まで話を聞いてくれないと、最初から諦めていたからだ。
私は膝ので握りしめていた自分のを、ゆっくりと緩めた。
く、息を吐きした。
「先、しだけ娘と話してもよろしいでしょうか」
私の静かな声に、佐藤教諭は驚いたように頷き、を閉じた。
私はパイプ子を結の方へしだけ向けた。
「結」
結の睫毛が震え、恐る恐る私の方を見げた。その瞳は、拒絶と恐怖で張り詰めていた。
「いつから、この学にきたいとってたの?」
責めるような響きは、つも乗せなかった。ただ、事実をりたいという、のとしての問いかけだった。
結は喉を詰まらせ、さな声で答えた。
「……の、から」
「もからなのね」
私は頷いた。
「どうして、今まで私に言ってくれなかったの?」
結は唇を噛み、線をテーブルのに落とした。い沈黙の、絞りすような声が聞こえた。
「……言ったら、るとったから」
「には?」
結の目から、粒の涙がぽろりとこぼれ落ちた。
「どうせ話しても……途で話が鳴って、仕事の話になって、最まで聞いてもらえないって……そうったから」
胸の奥が、鋭利な刃物で抉られるように痛んだ。
言い訳の余など、どこにもなかった。それが、私がこので娘に植え付けた現実だったのだ。
私は背筋を伸ばし、結の濡れた瞳を真っ直ぐに見つめた。
「そうね。今までの私なら、きっと途で遮って、自分の都のいいを押し付けていたとう」
結が息を呑んだ。
「でも、今はそのために仕事を休んで、ここまで来たの。午はずっとがある。だから……最初から全部、聞かせてくれる?」