"四枚の余った名札" 第8話
消された予定表
の旬に入り、朝夕のえ込みが段と厳しくなってきた頃だった。
物流センターのトラブルも段落し、私は久しぶりにデスクで落ち着いて事務処理をこなしていた。元の内線話が鳴り、受話器を取ると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「お忙しいところ恐れ入ります。結さんの担任の、佐藤です」
臓がねた。学からの話。何か事故でもあったのだろうか。
「はい、です。結が何か?」
「あ、いえ、結さんが何か問題を起こしたというわけではないんです。ただ……来の者面談の希望の提締め切りが昨だったのですが、結さんのご庭からだけ、まだ提用が届いておりませんで」
「者面談……?」
私はわずデスクのカレンダーを見つめた。
「学に向けた、事な面談です。先週の曜に、全徒に案内プリントと希望調査票を配布したのですが……さん、ご確認いただけていませんでしょうか」
のが真っになった。
先週の曜。結から受け取った学の配布物は、だよりと、PTAのバザーの案内だけだった。
「……申し訳ありません。私の確認かもしれません。面談の期は、いつからいつまででしょうか」
佐藤教諭は程を読みげた。の第週、午からまでの枠でわれるという。
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「結さんには昨も声をかけたのですが、『お母さんは仕事で忙しいから、空いている枠のどこでもいいです』とおっしゃっていて。ですが、志望の方向性を決める切な面談ですので、保護者の方のサインと第希望から第希望までのご記入が必なんです」
「わかりました。今に確認して、には提させます」
話を切り、受話器を置くが微かに震えていた。
『空いている枠のどこでもいい』。
結は、者面談の程すら、私に教える気配がなかったのだ。
職業体験説会を断って以来、結は学の話を切しなくなっていた。だが、まさか学に関わる最の類まで、私の目から隠しているとはわなかった。
定を待たずに退勤し、帰りののでスマートフォンの画面を何度も睨みつけた。
りよりも先に、い焦燥が湧きがっていた。
あの子は、どこまで私を注するつもりなのだろう。
織さんが代わりをりた今、結はどうするつもりだったのか。
本当に、母親のいない席にで座るつもりだったのか。それとも、私のらない別の誰かを、また見つけていたのか。
自宅に着き、玄関のドアをけた。
リビングには気がついており、キッチンの換気扇が回っていた。
結がコンロで即席のスープを温めていた。
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「結」
私がく呼ぶと、結はお玉を止めて振り返った。私の顔を見た瞬、何を言われるかを察したように、その目がすっと細くなった。
私はビジネスバッグから帳を取りし、ダイニングテーブルのに叩きつけるように置いた。
「佐藤先から話があったわ」
結の肩が、わずかにピクリとねた。
「者面談の希望調査票。先週配られたはずよね。……どこにあるの」
結は何も言わず、コンロのを止めた。
背を向けたまま、お椀にスープを注ぐ。その作のつひとつが、あまりにも緩で、私を拒絶するための壁のように見えた。
「結! のを決める面談よ? どうして私に類を渡さないの!」
声を荒らげる私に、結はゆっくりと振り返った。
その顔には、怯えも罪悪もなかった。
ただ、どこまでもえ切った、暗い瞳が私を射抜いていた。
「渡したら、どうなるの?」
結のからたのは、静かな、けれど逃げのない問いだった。
「どうなるって……予定をわせて、私が学にくに決まってるでしょ!」
「また、そうやって言うんだ」
結は自嘲するように元を歪めた。
「お母さんは『く』って言うよ。絶対に言う。類にも第希望から第希望までいて、ちゃんとすよ。……でもね、当になったらどうせ来られないんでしょ」
「今回はそんなことない! の話よ? 仕事を休んででも――」
「嘘ばっかり」
結のい声が、リビングの空気を瞬で凍りつかせた。
「お母さんは、嘘をつくつもりがない嘘をつくの。それが番嫌なの」