"四枚の余った名札" 第7話
けないという返事
に戻ると、リビングは暗かった。
結の部のドアの隙から、細いが漏れている。昨のように鳴り込む気力は、もう私には残っていなかった。
織から返された枚の名札を、自分の寝の引きしの奥にしまった。
指先についたプラスチックのたさが、いつまでも抜けなかった。
の朝、朝のトーストを焼いているだった。
結が制姿でリビングに入ってきて、蔵庫から麦茶を取りした。私と目をわせようとはしない。昨の今で、関係が修復されるはずもなかった。
コップに茶を注ぎ終えた結が、背を向けたまま、ぽつりと言った。
「来週の曜、学で職業体験の保護者説会があるんだけど」
私のが止まった。
フライパンのの目玉焼きが、チリチリと音をてている。
「……何から?」
「午半から」
結は振り返らなかった。その声には、期待も、懇願も、りすらも含まれていなかった。ただの業務連絡のような平坦な声だった。
以の私なら、即座にこう答えていただろう。
『わかった、絶対にくから。何があっても調する』と。
だが、私ののに、織の言葉と、引きしのの枚の名札が蘇った。
請けいをして、また分に断りのメッセージを送るのか。
私はを止め、エプロンのポケットからスマートフォンを取りした。
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会社のスケジュールアプリをく。
来週の曜。午から、部配送センターのシステム更に関する全体会議が入っていた。私がプロジェクトリーダーを務める、半がかりの案件だ。
画面を見つめたまま、喉が渇くのをじた。
抜けせるか。副課に代役を頼めるか。
いや、稼働当のトラブル対応を考えれば、管理職の私が現をれることは極めてリスクがい。
「結」
私が呼ぶと、結は無言でこちらを向いた。その目には、いつものめたが宿っていた。
「今すぐには、くって約束できない」
結の眉が、ほんのわずかにいた。
「仕事の予定を確認して、調できるか試してみる。でも、確定するまでは、けるとは言えない」
結は何も言わなかった。
ただ、しだけそうな顔をして、それからすぐにを消した。
「……ふーん」
それだけ言って、結はパンをつまむこともせず、カバンを肩にかけて玄関へ向かった。
、私はあらゆる調を試みたが、会議のをかすことはできなかった。部署の部陣が勢揃いするであり、私のは許されなかった。
そのの夜、私は結の部のドアをノックした。
「結、入るよ」
返事はなかったが、ドアをけた。結は机に向かって英語のワークを解いていた。
「来週の曜の説会だけど」
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結のが止まる。背が直するのが分かった。
「どうしても会議がせなかった。今回は、けない」
部のにい沈黙が落ちた。
私は息を吸い、織の言葉をいしながら、誠実に言葉を継ごうとした。
「ごめん。だから、事に提しなきゃいけない類があるなら、私が今夜くし、先に話で確認が必なら――」
「いい」
結は振り返りもせず、机ののシャープペンの芯をカチカチと鳴らした。
「別に、何もしなくていいから」
「結、でも――」
「いいって言ってるでしょ。けないなら、それで終わり。最初から期待してないから」
シャープペンの芯が、パキリと折れた。
結は折れた芯を指先でゴミ箱に弾きばし、次のページをめくった。
誠実に断ったはずだった。嘘をつかず、直で裏切ることもなく、週もに伝えた。
けれど、部をてドアを閉めた私の胸に残ったのは、達成などではなく、耐えがたい寒気だった。
誠実になったからといって、許されるわけではない。
積みげてきた信は、たった度の「正直な拒絶」によって、より固に証されてしまっただけだった。