"四枚の余った名札" 第6話
枚の余った名札
ファミレスのが、私の肌を刺すようにたくじられた。
「度だけなら、まだ分かります」
私は乾いた唇をいた。
「でも、先は『先も来ていた』と言いました。回きりじゃなかった。文化祭の準備会も、部活の保護者会も、あなたが私のふりをしてていたんでしょう」
織は否定しなかった。ただ静かに、膝ののトートバッグのファスナーをけた。
から取りされたのは、角の丸くなった茶封筒だった。彼女はそれを両で持ち、テーブルの端、私のに滑らせた。
「けてみてください」
封筒のにを入れると、プラスチックのい触があった。
引きすと、学の章が入った透な名札クリップがつ。
そしてそのに差し込まれたいカードのすべてに、結のあの几帳面な跡で、同じ文字がかれていた。
『美・母』
枚や枚ではない。これから先にあるはずの保護者会や説会の数だけ、あらかじめ用された私の名。
「先週、結ちゃんからこれを預かりました」
織が静かに言った。
「『次の説会と、者面談の分もいてきたから、持ってて』って。その、私、背筋が凍るような気がしたんです」
「背筋が凍る……?」
「最初は、困っている子どもを助けているつもりでした。でも違ったんです。私は助けていたんじゃなくて、結ちゃんに『お母さんは来ない』という諦めを、完璧に成させる伝いをしていただけでした」
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織の言葉が、容赦なく私の臓を抉った。
「私が代わりとして座るたびに、結ちゃんので、お母さんの席は最初から用されなくなっていくんです。私が名札をつけて微笑むたびに、あのでお母さんが働いているが、全部消えていくような気がしました」
織はテーブルにをつき、私に向かってをげた。
「だから私、昨結ちゃんに言ったんです。『もうお母さんの名はつけられない。これからは奈々の母親としてしか学にけないし、あなたの席には座れない』って」
私は息を呑んだ。
「結は……なんて言いましたか」
織は顔をげた。その瞳には、い痛みが宿っていた。
「すごく、っていました。『阿姨(おばさん)は助けてくれるって言ったじゃないか、嘘つきだ』って。あんなに声を荒らげた結ちゃんを、初めて見ました」
織はそこで言葉を切り、私をまっすぐに見つめた。
「でも、私は言いました。『困ったはいつでも話を聞く。でも、私があなたのお母さんの名札をつけることは、お母さんが来なかったという事実を消すことにはならない。私は、あなたのお母さんが来なかったことの証にはなりたくない』って」
証。
が私の名を胸につけて座るという為は、私が娘を置きりにしたという消せない痕跡そのものだったのだ。
「名札はお返しします」
織はちがり、伝票をに取ろうとした。
私はそれをで制し、自分の財布から千円札を枚した。
「結構です。これは私が払います」
織は度を止め、私に向かって々とお辞儀をした。
「さん。結ちゃんは、お母さんが嫌いなわけじゃないんです。ただ……傷つく準備をするのに、疲れ切ってしまっているだけなんです」
自ドアのベルが鳴り、織の背が夕暮れのへと消えていった。
テーブルのには、めきったドリンクと、枚の『美』が取り残されていた。