"四枚の余った名札" 第4話
カバンのの連絡網
ダイニングに、耐えがたい沈黙が落ちた。
結はそれ以何も言わず、テーブルのの自分のスマートフォンを掴むと、踵を返して自分の部へと向かった。
引き戸が閉まり、カチリと鍵の回る音が響いた。
普段なら「部の鍵なんてかけるんじゃない」と叱りばすところだった。だが、私のはに張り付いたようにかなかった。
計の針のむ音だけが、やけにきく響いていた。
私は震えるで自分のスマートフォンを操作し、過のメッセージ履歴を遡った。
『ごめん、会議が延びた』
『急なトラブルで向かえない』
『今度の曜、好きなもの何でも買ってあげるから』
履歴の画面には、私が送った無数の「言い訳」が並んでいた。
私はそれを、母親としての責任を果たした記録だとい込んでいた。けなくても連絡を入れ、からに連れてき、欲しいと言われたを買い与えた。それでチャラになったと、勝に処理していたのだ。
だが、結にとってそれは「裏切りの履歴」でしかなかった。
ふと、廊に置かれたままの結の通学カバンが目に入った。
私は躊躇いながらもカバンにづき、ジッパーをけた。罪悪はあった。だが、あの写真の女の正体を突き止めなければ、今夜はもできない。
教科やノートの隙から、つ折りにされたプリント類を引っ張りした。
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そのに、に配られた『緊急連絡網・名簿』があった。
結の学、組と組の徒の氏名と、保護者名、緊急連絡先の固定話番号が並んでいる。
結の親友の名を探した。
学から帰ると、々話題にていた名。「ナナちゃん」。
名簿を指で辿る。
『野寺奈々』。その保護者欄にかれていた名に、目が止まった。
『野寺織』
ので、昼の写真と、所の景が急激に結びついた。
見覚えがあった。駅のドラッグストアだ。調剤薬局の受付の奥で、を着て処方箋を受け取っていた女性。目たず、いつも丁寧にお辞儀をしていた、あの薬剤師の助だ。
カバンの奥から、もうつのものがてきた。
透なジッパー付きのビニールケース。そのに、学のマークが入った予備の名札クリップがつ入っていた。
そして、そのケースの底に、が何枚かなっていた。
取りしてみて、私は息を呑んだ。
いカードには、結の丸っこい文字で、あらかじめ名がき込まれていた。
『美・母』
『美・母』
『美・母』
枚ではない。これから先にあるはずの保護者事の数だけ、丁寧に、何枚もき溜められていたのだ。
指先がたく凍りついた。
これは、衝な度きりの嘘ではない。
娘は最初から、私が来ないことを提として、未来の予定を組んでいた。
「お母さんは来ないだ」という絶対な法則のに、別の誰かを座らせる準備を、で静かにめていたのだ。
連絡網のに印刷された『野寺』の番号を、私は指先でく押し付けた。
の朝、この女に会いにく。
母親としての権利を取り戻すためか、それとも、この居の悪い痛みを誰かのせいにしたいだけなのか、そのの私にはまだ分かっていなかった。