"四枚の余った名札" 第2話
ボールペンの跡
駅のスーパーで買った惣菜のパックを皿に移し替えることもせず、私はダイニングテーブルの端に腰掛けていた。
午過ぎ、玄関の引き戸がき、結が帰ってきた。
「ただいま」という声は普段と変わらない。部活のテニスバッグを玄関脇に置き、を洗ってリビングに入ってきた結は、卓に並んだ付かずの炒め物を見てを止めた。
「お母さん、かったんだ。保護者会、どうだった?」
結はごく自然にそう尋ねた。
罪悪も、焦燥も、その表には微も見当たらなかった。そのあまりの平然さに、胸の底でどす黒いりが膨らんでいくのをじた。
私は何も答えず、ポケットからスマートフォンを取りした。
画面を点灯させ、昼に撮した写真を画面いっぱいに表示させて、テーブルの真んに滑らせた。
「この、誰?」
結の線が、テーブルののガラス画面に落ちた。
画面に映る、自分の隣に座る紺のカーディガンの女。胸元の名札。
結のきが、はっきりと止まった。
瞳が微かに揺れ、喉元が度だけした。
だが、叫び声をげることも、言い訳をにすることもなかった。
結の顔から、すっと血の気が引いていくのが分かった。驚きではなく、ただ「見つかった」という事実を、徹に受け止めたような青さだった。
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「誰なのって聞いてるの。私の名を勝に使って、学に入り込んでるのよ。何者なの?」
私の詰問に、結は線を落としたまま、乾いた声で言った。
「お母さん、そののところかないで」
「は? 何を言ってるの」
「お願いだから。あのは悪くないから、かないで」
懇願するような言葉とは裏腹に、その声には奇妙なさがあった。
私はちがり、テーブルに両をついた。部のな運ミスを問い詰めるよりも、ずっと荒い息が漏れた。
「悪くないわけないでしょ! 赤のが母親のふりをして授業参観に座ってたのよ? 名札まで偽造して! これは犯罪よ。あなたが騙されてるんじゃないの? みでも握られてるの?」
「違う!」
結が突然、顔をねげた。
普段は反抗期らしい反抗もせず、私の言うことにさく頷くだけだった娘が、見たこともないいを目に宿して私を睨みつけていた。
「騙されてなんかない! みでもない!」
「じゃあ何なのよ!」
結は拳を握りしめ、唇を真文字に結んだ。
そして、逃げのない静けさのに、はっきりとその言葉を落とした。
「私が頼んだの」
空気が止まった。
「……何?」
「私が頼んで、来てもらったの。『お母さんのふりをして座って』って、私が頼んだの」
結の目は逸らされなかった。
私のので、組みてていたすべての理屈が音をてて崩れっていった。