"四枚の余った名札" 第1話
保護者会と枚の写真
平の午、学の渡り廊にはワックスと履きのゴムが擦れう特の匂いが漂っていた。
私、美がこの舎にを踏み入れたのは、娘の結が入学して以来、今が初めてだった。
物流会社の運管理課。それが私の肩だ。
管轄するトラックは百台を超え、々トラブルや荷主からの急な請に追われている。婚して、毎の宅ローンも、結の学塾の謝も、度たりとも滞納したことはない。病気のには仕事を抜けて病院へ連れてったし、必な学用品を切らしたこともない。
私は自分を「きちんとした親」だとっていた。ただよりし、仕事の拘束がいだけだと。
今は週から配送ルートを調し、副課に端末を預けてまでを作った。学の、初めて席できた保護者会だ。
組の教ので、担任の佐藤教諭と目がった。
代半ばの女性教諭は、私を見るなりわずかに目を丸くし、それから取り繕うように笑った。
「あ……さん、ですよね。今回はお母様ご本がいらしてくださったんですね」
廊の喧騒ので、その言葉だけが奇妙にに残った。
私はを止め、首を傾げた。
「え? 本……とはどういうことでしょうか」
「あ、いえ。先の公授業のは、確か妹さんだとおっしゃっていたので」
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「妹?」
わず声がくなった。
「私、っ子です。妹なんていませんが」
佐藤教諭の笑顔が瞬に凍りついた。教諭は困惑したように鏡のブリッジを押しげ、元のバインダーと私の顔を何度も見比べた。
「ですが、先の名簿には確かにお名があって……しお待ちください」
教諭は教壇の脇に置かれていたクリアファイルから、学だより用の記録写真を取りした。
学級閉鎖や事のたびに撮される、保護者参加の記録写真だ。
渡されたA4サイズの沢を、私は無言で受け取った。
窓際のろから番目の席。結が背筋を伸ばして座っている。
その隣のパイプ子に、代半ばほどの女性が座っていた。
控えめにまとめられた黒髪に、落ち着いた紺のカーディガン。どこか居悪そうに、けれど背を丸めずに座っている見らぬ女だった。
私の線は、その女の胸に釘付けになった。
学が保護者会ごとに配布する、全ピン留めの名札。
そのいカードに、油性ボールペンの几帳面な跡で、はっきりとこうかれていた。
『美・母』
の奥がたく引き締まるような覚があった。
私の名だ。
私が必に働き、税を納め、娘を養ってきた、私自の名が、全くらないの胸にぶらがっていた。
「……先。この写真、スマートフォンで撮っても構いませんか」
私の声が震えていなかったのは、の管理職としての習慣に過ぎなかった。
「ええ、それは構いませんが……本当に、ご親族ではないのですか?」
「見たこともありません」
たいスマートフォンのレンズを向け、シャッターを切った。
画面のの女は、し困ったような、い笑みを浮かべていた。