"十一時八分の「家に着きました」" 第17話
脱ぎ捨てたパンプス
季節は巡り、の旬を迎えていた。
京のはすっかりの装いになり、の葉は落ち尽くし、たい枯らしがビルのを吹き抜けていた。
理は先の旬、慌ただしく引き継ぎを終えてシンガポールへと旅っていった。
見送りにはかなかった。
美穂からは「空港まで緒にかないか」と誘われたが、「それは族の仕事でしょう」と断った。
美穂もそれ以は無理いしなかった。
の噂で、空港の発ロビーで姉妹が泣きながら抱きったこと、そして理が「来のには度帰ってくるから、姉さんのに泊めてね」と自分から言ったことを、美穂からのいメッセージでらされた。
私と理のには、その、連絡は件も交わされていなかった。
番号を消したわけではない。着信拒否にしたわけでもない。
ただ、お互いに連絡を取る理由がなかった。
それでいいのだとっていた。私たちは族になったわけでも、親友になったわけでもない。互いのの結び目が、ほんの瞬、奇妙な形で擦れっただけの関係だ。
曜の夜。
末のに追われ、会社をたのはを優に過ぎていた。
たいがる、傘をすぼめてアパートの階段をる。
鍵をけ、え切った畳の玄関にを踏み入れた。
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照のスイッチを入れ、バッグをに置き、濡れたコートをハンガーにかける。
ストッキングの爪先がたく張っていた。私は息を吐きながら、履き続けての甲を締め付けていた黒いパンプスを、玄関のに脱ぎ捨てた。
静まり返った部。
以と何つ変わらない、私だけの暮らしの空だ。
けれど、もう以のような息苦しい頑なさや、者を遮断するための警戒は、部のどこにも淀んでいなかった。
計を見げると、分を指していた。
着替えようとクローゼットへ向かいかけたその、コートのポケットので、スマートフォンが微かに震えた。
メッセージアプリの通音ではない。
聞き慣れた、あのSMSのい振。
私はを止め、ゆっくりとコートのポケットにを伸ばした。
取りしたスマートフォンの画面に、見覚えのある桁の数字が表示されていた。
画面を親指でスライドさせる。
『今もに着きました。』
わず、元が緩んだ。
相変わらず、無なほどいだった。
差があるはずだから、向こうは今、夜の分だろうか。常の湿ったが吹く異国の部で、彼女もまた、分の仕事を終えて靴を脱いだのだろう。
画面を見つめていると、数秒の空のあと、画面がさく揺れた。
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『そちらはどうですか?』
続いて届いた、目。
私は玄関を振り返った。
のに、つま先を側に向けたまま、揃いに脱ぎ捨てられたのパンプス。
疲労と、堵と、かすかな活の気配。
私は親指をかした。
もう迷いも、恐怖もなかった。自分のを者へと渡すことへの躊躇いは、あの、品川の喫茶に置いてきていた。
『私もちょうど、今ついたところ。』
送信ボタンを押す。
緑の吹きしが、暗い玄関を柔らかく照らしした。
それは、方な点呼でも、義務の押し付けでもない。
この広い世界のどこかで、お互いが今夜も無事にき延びたことを、静かに確かめうための、確かな応答だった。
画面を伏せ、私は部の奥へと歩きした。
京のの夜はまりつつあったが、私の取りは、以よりもずっと軽かった。