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"書けないはずの祖母のハガキ" 第17話

絞りされた「いや」

部のかりので、が止まった。

カチ、カチ、カチ、と壁の丸計の秒針が音を刻む。

それ以の音は、誰の呼吸音すら聞こえないほど、会議は完全な静寂に包まれていた。

私は祖母のを握りしめ、その瞳をじっと見つめ続けた。

祖母の喉仏が、さくした。

が半きになり、乾いた唇がわななく。

言葉を探しているのだ。

麻痺した神経の奥底で、バラバラになった音の破片を、必にかき集めている。

「……あ……」

微かな掠れ声が漏れた。

それきり、また沈黙が落ちる。

秒。

伯父が貧乏揺すりを始めた。

苛ちと焦りが、その爪先から伝わってくる。

母はいたたまれないように顔を伏せ、膝ののハンカチをきつく握りしめていた。

分。

祖母の額に、じわりと汗が滲みてきた。

の指先が、クッションのでピクピクと痙攣している。

苦しそうな、もがき苦しむような表。

「もういいよ」と誰かが助け舟をしたくなるような、残酷な沈黙のさだった。

それでも私は、祖母のを握る力を緩めなかった。

「丈夫だよ」とも言わなかった。

ただ、待った。

祖母の尊厳が、その喉を通り抜けてくるのを、息を止めて待った。

分秒が過ぎたときだった。

祖母の濁った瞳に、すっといが戻った。

線が、私の目を真っ直ぐに捉えた。

そして、歪んだ唇の端から、絞りすような、濁った息が吐きされた。

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「……い……」

部の空気が張り詰めた。

「……いや……だ……」

はっきりとした、拒絶の文字だった。

伯父の貧乏揺すりが、ピタリと止まった。

母が弾かれたように顔をげた。

祖母は胸をきく波打たせ、肩で荒い息を吸い込んだ。

そして、かないをでぎゅっと押さえ込みながら、途切れ途切れに、だが決して聞き逃せない声で、続きの言葉を紡ぎ落とした。

「いや……だけど……」

祖母の目から、粒の涙がポロポロとこぼれ落ち、カーディガンの胸元に染みを作っていった。

「……ある……けなく、なったら……いく……」

息が止まりそうになった。

「いまは……ここに……いたい……。が……みえる……部に……いたい……」

それが、祖母の答えだった。

か黒かの、単純な反抗ではなかった。

自分の体が衰えていることも、いつかはけなくなることも、祖母はちゃんと分かっていた。

それでも、歩けるうちは、の景が見える階の部で、自分の力できていたい。

その葛藤と諦めと、ささやかな希望が、そのまま混ざりった、完全で、だからこそ本物のの言葉だった。

会議の誰も、声を発することができなかった。

野護師が、目元をで押さえた。

母は両で顔を覆い、肩を震わせて泣き始めた。

伯父は、テーブルのに置かれた印鑑を見つめたまま、微だにしなかった。

その顔からは、りも苛ちも消えっていた。

ただ、背負ってきた荷のさと、自分が踏みにじってきたものの輪郭を突きつけられたような、い虚脱だけが漂っていた。

朱肉の赤がついた印鑑は、度も類に触れることなく、伯父の震える指先からポロリと転がり落ちた。

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