"書けないはずの祖母のハガキ" 第12話
換気扇のの煙
曜の午。
約束のが終わろうとしていた。
私は祖母の部のパイプ子に座り、抜け殻のようになっていた。
着替えたばかりのシャツには、昼のとろみ汁の染みがつき、爪のには消毒液の匂いが染み付いている。
昨夜は祖母の寝返りのたびに目が覚め、夜に「が痛い」と呻く祖母のをさすり続けた。
背と腰の痛みは鈍い痛へと変わり、考がに包まれたように働かない。
ガチャリと引き戸がいた。
現れた伯父は、昨と同じジャンパー姿だった。
部のを見回し、ゴミ箱に溜まった使用済みパッドの袋と、ベッドサイドに頓された着替えのに目を止めた。
「……きてたか」
伯父の声には、嘲笑のはなかった。
ただ、すべてを分かりきっていたの、ややかな乾きがあった。
伯父は無言でベッドにづくと、乱れていたシーツの端をキュッと引っ張り、際よくベッド柵のに挟み込んだ。
祖母の掛け布団の襟元を直し、枕の位置をセンチほど持ちげる。
その作のすべてに無駄がなく、流れるようだった。
「、くぞ」
伯父は祖母に声をかけることもなく、私に背を向けた。
階の裏をたところに、厨のきな換気扇が回っている所があった。
油と汁の混ざった排気ので、伯父はポケットからセブンスターを取りし、ライターでをつけた。
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の煙が、夕暮れのたい空気に吸い込まれていく。
「どうだった」
伯父は煙を吐きしながら、を向いたまま言った。
「……獄でした」
私のから、絞りすように本音が漏れた。
がりも、綺麗事も、もう文字も残っていなかった。
「半で、これです。おばあちゃんが泣くたびに、私のほうが泣きたくなりました。……伯父さんは、これを、毎やってきたんですね」
伯父は何も言わず、くタバコを吸い込んだ。
がチリチリと燃え、赤くる。
「最初はな」
伯父が、ぽつりと言った。
いつもの声ではなく、どこかい記憶を掘り起こすような声だった。
「母さんも、遥に何通もをきたいって言ってたんだ。倒れたばかりの頃は、まだでペンを握ろうとしてた」
換気扇のファンが、く唸りをげている。
「俺も最初の数ヶは付きったよ。母さんの震えるを支えて、文字くのに分待った。でもな、会社で役職定になって料が割減って、のローンは残ってて、嫁からは『いつまでお義母さんの世話にかかりきりなの』って責められて……そんなに、夜に病院から話がかかってくるんだ」
伯父の指先が、タバコの根元をきつく挟み込んだ。
「枚のハガキに付きってたら、俺の庭が先に壊れるんだよ。母さんの『会いたい』に付きって遥を呼べば、母さんはぶ。
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でも帰った、母さんは『遥は次いつ来るのか』ってそればかり聞いて、飯もわなくなる。その相をするのは俺なんだ」
伯父は吸い殻を携帯皿に押し込み、乾いた唇を舐めた。
「母さんの気持ちを全部そのまま聞いてたら、俺が母さんを殺すか、俺がぬかの択だったんだよ」
たい沈黙が落ちた。
反論の言葉は、私の喉のどこにも見当たらなかった。
伯父を責めることは、簡単だった。
だが、その伯父の「改ざん」のに、私の京での平穏な常が成りっていたのだ。
伯父が祖母の言葉を握りつぶしてくれたからこそ、私は神保町で本を作り、締め切りに追われ、週末に友達と笑っていられたのだ。
「曜のに、カンファレンスがある」
伯父は背を向けたまま言った。
「俺は、階への移同にサインする。母さんの全のためにも、俺がき延びるためにも、あれが番いいんだ」