"書けないはずの祖母のハガキ" 第9話
階への移同
夕方、私が荷物をまとめて階のナースステーションのを通りかかったとき、護師の野さんに呼び止められた。
「遥さん、ちょっといいですか」
野さんは私を、ステーションの脇にあるさな相談へと促した。
パイプ子に座ると、野さんは机のに枚の類を置いた。
『ケアプラン変更に伴う事項説および同』
太いゴシック体で印刷されたタイトルのに、祖母の名と、現の介護度「介護3」が記されている。
「これは……?」
「来の旬にですね、文子さんの今のケア方針を決めるための、ケアカンファレンスが予定されているんです」
野さんは慎に言葉を選びながら、類の箇所を指差した。
「議題は、文子さんの『階フロアへの転棟』についてです」
「階……?」
私は建物をいした。
祖母の部がある階は、当たりがよく、廊の幅も広くて、比較自度のい入居者が暮らしている。
階には、何があっただろうか。
「階は、度の認症や、常介助が必な寝たきりの方向けの特別フロアです」
野さんの声のトーンが落ちた。
「全管理のため、フロアの入りには暗証番号式の子ロックがかかります。入居者様がでエレベーターに乗ったり、階段にづいたりすることはできません。
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お部のドアも、内側からはけられない構造になっています」
息が止まりそうになった。
「それって……閉じ込めるってことですか?」
「言葉は悪いですが、転倒や徘徊のリスクを避けるための、管理化フロアです。事もデイルームに集まるのではなく、原則として居配膳になります。職員の目は届きやすくなりますが、文子さんのようにまだ識がしっかりされていて、子で自したいという欲がある方にとっては……活範囲が極端に狭まることになります」
「どうして、そんなところに……おばあちゃん、最腰がったとは聞きましたけど、そこまで認症がんでるようには見えませんでした!」
「ええ。私たち護スタッフとしても、文子さんはまだ階での活を続けられると考えています。リハビリを続ければ、子の自も維持できます」
野さんは困惑したように眉を寄せ、声をさらに潜めた。
「ですが……正昭様から、いご望があったんです。『これ以夜に転倒されて病院通いが増えるのは困る。もっと管理の厳しいフロアに移してくれ』と」
昨夜、伯父が見せてくれた類のが脳裏をよぎった。
夜のの救急。零度の病院通い。
伯父は、もう限界なのだ。
祖母の自由を奪ってでも、自分が夜に呼びされるリスクをゼロにしたいのだ。
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「正昭様は、『母本も納得している。本も階のほうが全だから移りたいと言っている』とおっしゃっていました」
野さんの線が、私を試すように見つめていた。
「遥さん。文子さんは本当に、ご自分で階へきたいとおっしゃったんでしょうか?」
私は元の同を見つめた。
署名欄にはまだ何もかれていない。
だが、その余にはすでに、伯父のあの言葉がなって見えていた。
『だいたいっている』
祖母が「迷惑をかけたくない」と漏らした言を、伯父は「階に移りたい」という同にすり替えたのだ。
ハガキの文面をき換えたのと同じで、今度は祖母の余の居所そのものを、自分の都のいい檻へと作り変えようとしている。
「来週の曜、からカンファレンスがあります。キーパーソンである正昭様と、京のお母様にもご席いただく予定です」
野さんは静かに類をトントンと揃えた。
「そこで正昭様がサインをされれば、翌週には階へ移となります。度階へ移られたら、階へ戻ることは……まずありません」
相談をると、廊の窓のはすっかり夜のに包まれていた。
逃げられない。
もう、京へ戻って仕事に没することで、すべてを忘れることなんてできなかった。
来週の曜。
その会議の席で、私は何をしなければならないのか。
え切った指先でカバンを抱え直しながら、私は暗い夜へとを踏みした。