"書けないはずの祖母のハガキ" 第6話
兄さんに任せなさい
伯父のをた、私は駅の古いビジネスホテルに転がり込んだ。
狭いシングルルームのベッドに腰をろし、コートも脱がないまま、震える指でスマートフォンの画面を操作した。
京の母に話をかける。
呼びし音が回鳴ったところで、聞き慣れた、しのんびりとした母の声が響いた。
『もしもし、遥? こんなにどうしたの? 原稿の締め切り終わったの?』
「……お母さん。今、松本にいるの」
受話器の向こうで、微かに器の触れう音が止まった。
『え? 松本? どうして?』
「野で仕事があったから、おばあちゃんの施設に寄ったの。それから、伯父さんのにもってきた」
沈黙が落ちた。
母の気配が、瞬で警戒のを帯びたのが波越しにも伝わってきた。
『……あんた、正昭兄さんに何か言ったの?』
「何か言ったかって……お母さん、ってたの? おばあちゃん、から麻痺でペンなんて持てないんだよ。毎週曜に届いてたハガキ、全部、伯父さんがいてたんだよ」
私の声は自然とくなっていた。
母も同じように驚き、憤ってくれると、どこかで信じていたのだ。
だが、返ってきたのは、いため息だった。
『……やっぱり、そのことだったのね』
「ってたの?」
私の喉が引きつった。
『ってたわよ。兄さんから聞いてたもの。「母さんは字がけないから、俺が代わりに遥にハガキをしておくよ」
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って』
「じゃあ、がき換えられてることもってたの!? おばあちゃんは私に会いたいって言ってるのに、伯父さんは『忙しいなら来なくていい』『仕事優先にしなさい』って、全部嘘をいてたんだよ!」
ベッドのシーツを爪がくなるほど握りしめた。
しかし、母のからたのは、りではなく、私を窘めるえた言葉だった。
『遥、あんたね。兄さんを責めるのは筋違いよ』
「筋違い……? どうして!」
『兄さんがでどれだけ苦労してるか、あんた分かってないのよ。私は京に嫁いだし、あんたの父親がくなってからは自分の活で杯。野の実のことも、お母さんの介護のことも、全部兄さんに押し付けてるのよ』
「だからって、嘘をついて私を会わせないようにしていいわけ――」
『嘘じゃないでしょ!』
母が声を荒らげた。話で母が鳴るのを、私は久しぶりに聞いた。
『お母さんだって、あんたの仕事の邪魔をしたくないのは本当よ。兄さんがし言葉を丸めてくれただけじゃないの。あんた、ハガキに「会いたい、寂しい、すぐに野に来てくれ」って毎週かれてたらどうするの? 毎週仕事休んで幹線乗れるの? できないでしょ!』
言葉が喉につかえた。
『あんたが京でして働けるように、兄さんが気を利かせてくれたのよ。それをわざわざ野までってほじくり返して……兄さんの嫌を損ねたらどうするの? 兄さんが「もう面倒見切れない」
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って言いしたら、あんたが引き取るの?』
「それは……」
『私には無理よ。パートと持病で杯なんだから。余計な波てないで、の朝番の幹線で帰ってきなさい。介護はね、現にいるが番偉いの。野がいちいちしするものじゃないのよ』
方に話が切れた。
プツッという無質な切断音が、の奥に残る。
部のは静まり返っていた。
のい唸り声だけが響いている。
母はっていたのだ。
そして、伯父が都よく言葉をき換えてくれることを、歓迎すらしていたのだ。
母にとっても、あのハガキは「野へかなくていい免罪符」だったのだ。
伯父に介護を押し付け、文句を言われない代わりに、祖母の志の決定権をすべて伯父に売り渡した。
そして私もまた、その甘い取引に、無自覚にただ乗りしていたに過ぎなかった。
ベッドに倒れ込むと、井のいクロスがぼやけて歪んだ。