"七年前に死んだ母の退院" 第13話
段ボール箱の引っ越し
曜の朝、空はつなく澄み渡っていた。
部病院の正面玄関に、区の委託を受けたい福祉両が横付けされていた。リフト付きの軽ワゴンだ。
私は会社の休暇を取り、午半に受付を済ませた。退院続きの窓で、佐々文のこれまでの入院費用の精算を受け取る。滞納分を含めた万千円は、彼女の通帳に残っていたわずかな貯と、区の緊急福祉援護資から直接病院の座へ振り込まれるはずがっていた。私自の財布からたは、類の郵送料とコピー代の数百円だけだった。
「様、本当にお世話になりました」
階のロビーで、ソーシャルワーカーの皆川が々とをげた。
「佐々さんのしい居ですが、区にある『けやきの』というサービス付き齢者向け宅になります。医療法が運営しておりまして、は介護福祉士が常駐し、夜も定期な見回りがあります。活保護の受申請も、現の担当ケースワーカーへ完全に引き継ぎました」
皆川のから、A4サイズの茶封筒が渡された。
には、文の保険証、しいマイナンバーカードの交付申請の控え、そして施設の所と連絡先が記された類が入っていた。
「私の役目は、これで終わりですね」
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私がそう言うと、皆川は柔らかく微笑み、さく頷いた。
「はい。法な続きはすべて完しております。……ただ、本の移に際して、ご本の私物を運ぶ両が配できず、ご労をおかけしてしまい申し訳ありません」
私は元に置いたつの段ボール箱を見ろした。
昨、あのアパートの解体業者が入る直、民委員の青さんと緒に畳半の部から運びしてきた文の全財産だった。スーパーの空き箱にガムテープを字に貼っただけの、みすぼらしい荷物だった。
子に乗せられた文が、護師に押されてエレベーターからりてきた。
病院で支されたいグレーのフリースを着て、膝のにはさな提げ袋を抱えている。昨まであった点滴の痕には角いガーゼが貼られ、その表はどこか張り詰めていた。
「佐々さん、お迎えのが来ましたよ」
護師が声をかけると、文は私の方をちらりと見た。
そして、さく会釈をした。
「さん。……すみません、朝くから」
その声には、迷いも混乱もなかった。私を「枝」と呼ぶことも、「真紀ちゃん」と呼ぶこともなかった。ただの、続きにち会ってくれた見らぬ親切なに対する、余所余所しいまでの丁寧さだった。
私はレンタカーの軽ワゴンの部座席に段ボール箱をつ積み込み、福祉両のを追うようにして環状号線をへとらせた。
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しい施設は、荒川にい古い宅のにあった。
元は学寮だった建物を改装したという階建ての施設で、玄関先にはさなパンジーのプランターが並んでいた。
案内されたのは、階の端にあるワンルームだった。
畳ほどの広さで、は入れのしやすいクッションフロア、壁には真しいエアコンとさなナースコールが設置されていた。備え付けのシングルベッドと、さなクローゼットがあるだけの、あまりにも無質で清潔な空だった。
「文さん、ここが今からのお部ですよ。当たりがいいでしょう」
施設の活相談員の女性がるい声でカーテンをけると、午のやわらかなが部いっぱいに広がった。
文はベッドの端に腰掛け、両を膝のにきちんと揃えたまま、部の隅々をそうに見回していた。畳半の湿った畳と、ガタつく製の引き戸の匂いに慣れきった彼女にとって、このすぎる壁とプラスチックの匂いは、まるで別のの景のように見えているのかもしれなかった。