"七年前に死んだ母の退院" 第9話
赤いゴム印の退通
翌朝、洗面所の鏡ので顔を洗おうとして、の首に鈍い痛みをじた。
袖を捲ると、親指と本の指の形に沿って、赤黒い鬱血がく浮かびがっていた。昨、佐々文に掴まれた跡だった。歳の、骨と皮ばかりになった老のどこに、あんな力があったのだろう。たい蛇のを当てると、痛みが皮膚の奥へと染み込んでいくようだった。
スマートフォンをくと、兄の修からいメッセージが届いていた。
『名古の営業所でトラブル。今からまで張になった。病院の件は全部ソーシャルワーカーに任せろ。類には絶対に名をくなよ』
私は洗面台の縁にをつき、さく息を吐いた。
いつもそうだ。父が倒れたも、実の解体業者を決めるも、兄は決定な面になると「仕事」を盾にして姿を消す。残された雑務を引き受けるのは、決まって独の私だった。
会社に事を話し、午だけ休を取る連絡を入れた直、医療ソーシャルワーカーの皆川から話が入った。
『様、昨夜は変なご負担をおかけしてしまい、申し訳ありませんでした』
皆川の声は沈んでいたが、背には類をめくる乾いた音がしていた。現のはなど待ってはくれないのだ。
『佐々さんですが、け方に点滴で分が入ったことでし落ち着かれました。
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ただ、受け入れ先となる公な規模養護施設の申請にあたり、ご本の帳と印鑑、それから通帳の確認がどうしても必になりまして』
「佐々さんの私物ですか?」
『はい。以おまいだった杉並区のアパートに残されているはずなのですが、実は側から連絡がありまして。本に部をけ渡さないと、内の残置物をすべて処分業者に引き渡すと通告されてきたんです』
「今に……?」
『はい。滞納賃の清算と渡しには、先すでに佐々さんご自が判を押されていたようでして。側の弁護士から、本正午をもって玄関の鍵を交換すると言われています。区の民委員の方も同してくださることになったのですが、ご本の私財を確認する際、能であれば……元に関わりのあった方にち会っていただけないかと』
計の針は午を回っていた。正午まで、あともなかった。
「……所は、どこですか」
私はので乾いた舌をかし、帳をいた。
皆川から告げられた所は、武宿線の井荻駅から歩いて分ほどの宅だった。私がまれ育った沼の実から、自転なら分もかからない距だった。母が「ちょっとそこまで」と買い物にかける活圏の、まさにそのにあった。