"あなただけ辞めていいわけないでしょ" 第7話
の請求
「この、このって……!」
由美のが、ついに決壊した。
彼女はダイニングテーブルの引きしを乱暴に引くと、古びた何冊もの計簿と、領収の束を鷲掴みにしてぶちまけた。の束がフローリングのに散らばる。
「あなたが守りたいのは族じゃない! 『勤めげて、郊に戸建てを買って、妻子を自由なく養ってきた能な俺』という板だけでしょ!?」
「何を言ってるんだ! 俺が誰のために毎朝の満員に乗ってきたとってるんだ!」
私も声を張りげた。分の疲労と、今わった屈辱が、理性を完全に焼き切っていた。
「胃潰瘍で血を吐きながら、誰のために接待ゴルフにってをげてきた!? 千百万の宅ローンを、残り千百万まで減らしたのは誰だ! 俺が稼いできたから、おも翔太もをしのいで、何自由ない顔をして暮らせたんじゃないか!」
「何自由ない!?」
由美がで笑った。その顔は、見たこともないほど歪んでいた。
「じゃあ聞くけど、雅さん。翔太が歳のとき、ロタウイルスで脱症状を起こして緊急入院した夜、あなたどこにいた?」
私の記憶が、瞬で凍りついた。
「……会社の、忘会だ」
「そうよ。話で『抜けられないから頼む』って言ったきり、翌朝のまで帰ってこなかった。
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点滴の針を刺されて泣き叫ぶ翔太の腕を、私で朝まで押さえつけてたのよ!」
由美は散らばった計簿の冊を拾いげ、私の胸に叩きつけるように突きした。
「翔太が学にがったとき、PTAの役員を押し付けられて、平の昼に学へ通い詰めたのは誰? あなたのお母さんが腿骨を骨折したとき、毎週末、片かけて実の病院へ通い、オムツの交換まで伝ったのは誰!?」
「それは……男の嫁として――」
「男の嫁!?」
由美の切り声が響いた。
「私はあなたの会社の付属物でも、佐野の介護員でもない! あなたが『で稼いでる』という錦の御旗を掲げて、の面倒なこと全部から逃げ回っている、をすすって始末をしてきたのは全部私よ!」
由美の指が、私の先に突きつけられる。
「あなたが満員に乗ってた、私も働いてた! 朝に起きて弁当を作り、洗濯を回回して、パートにて、夕方って買い物して、夕飯作って、夜にあなたのワイシャツにアイロンをかけてた! 私の労働は、あなたの会社の就業よりかったのよ!」
息ができなかった。
胸の奥を太い杭で打ち抜かれたようだった。
「おを稼いできたが番偉い。でをげてる男が番変。そうやって、庭のの痛みを全部私に買い取らせてきたんじゃない! そのツケを今、全部払ってよ!」
「由美……」
「これ以、私に何を差しせって言うの!?」
由美の両肩が激しくしていた。
の沈黙。
「私がすれば波がたない」「夫は疲れているのだから」と、妻が胸の奥にみ込み続けてきたヘドロのような怨嗟が、リビングの空気を真っ黒に染めげていた。
私たちは、互いを支えってきた夫婦などではなかった。
ただ、互いのさから目を背け、相に「おの方がまだ耐えられるだろう」と無言の求を突きつけってきた、共犯者に過ぎなかったのだ。
そのだった。
廊の引き戸が、静かにいた。