"あなただけ辞めていいわけないでしょ" 第5話
歳、求票のたさ
曜の午、私は休暇を使い、宿の層ビルに入っている堅転職エージェントの面談ブースに座っていた。
仕切りの向こうからは、代や代とおぼしき若者たちの活な笑い声や、タイピングの軽な音が漏れ聞こえてくる。私のに座るキャリアアドバイザーは、歳の清潔のあるスーツを着た男だった。名刺には「シニアキャリア担当」とあった。
男は私の職務経歴を指先で丁寧にめくりながら、終始、崩れることのない営業用の笑顔を浮かべていた。
「佐野雅様、配で製造業の産管理。課職を、現の叩きげでいらっしゃる。ご派な経歴ですね」
「ありがとうございます。できればこれまでの経験を活かし、同業社で同じようなマネジメント業務を希望しています。収は……現の百万からがっても構いません。百万程度を維持できればと」
私がそう告げると、アドバイザーの指先がピタリと止まった。
男は静かに息を吸い、元のタブレット端末の画面を私に向けた。
「佐野様、率直に申しげてもよろしいでしょうか」
その声のトーンが、わずかにくなった。
「現、製造業の管理職求は極化しています。つは、全体のDX化や基幹システムの刷を主導できる、ITスキルのい代半までの方。
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もうつは、拠点でのちげ経験があり、英語で現を指揮できる方です」
私は喉の奥がつかえるのをじた。
「社内の基幹システムの運用なら、常にやってきました。トラブルの納期調や、請け企業との折衝なら誰よりも――」
「それは『その会社特の関係』ので能していたスキルです」
容赦のない刃が、正確に私の急所を突いた。
「社へ移った瞬、その調力はゼロクリアされます。歳というご齢で、収百万のポストを部から採用する、企業が求めるのは『即効性のある変革』です。既の組織をそのまま回すだけなら、え抜きの代を課に引きげた方が、件費も半分で済みますから」
アドバイザーは枚の求票を差しした。
「もし収百万以を維持したいのであれば、埼玉の奥にある物流倉庫の夜勤シフト管理、あるいは非破壊検査の現作業員としての積みからになります。どちらも体力勝負です。……いかがなさいますか?」
求票に印字されたの数字は、取りで万円とかれていた。ボーナスの支実績は「業績による」。
私はそれ以、何も言えなかった。
、会社にしがみつき、理尽に耐え、部の満を背で受け止めてきた。だが、社のへ歩た瞬、私のは「潰しの利かない歳の男」
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というに約されてしまったのだ。
夕方、い取りで最寄り駅の改札をた。
のはく、宅へ続く坂はすでに暗いに染まっていた。コートの襟をてて歩く会社員たちの背が、以の自分となり、そして今の自分からはひどくく見えた。
自宅の玄関をけると、に由美のパンプスが揃えられていた。
靴を脱ぎ、廊を渡ろうとしたとき、玄関の飾り棚のに置かれた枚のチラシが目に留まった。
域のハローワークが発している、いグリーンのフリーペーパーだった。その片隅に、赤いボールペンでさく丸がつけられていた。
『こども発達支援センター 受付・類理 千百円 週勤務』
千百円。
その数字を見た瞬、私の胸の奥で、面談でえ切っていた血がボロボロと音をてて逆流し始めた。