"120億円の契約を取った帰りにクビになった" 第5話
久は黒川と相沢を酷な目で見回した。
腹の底から響くような、い声で言った。
「黒川、これはどういうことだ?」
「瀬の張の事承認は、おが自分で俺に持ってきて判を押させたものだ」
「コンプライアンスの審査の、どうしてそれをさなかった?」
久はさらに相沢へ線を移した。
「それから相沢。引き渡しの1番事なところで、プロジェクト責任者に勝に解雇のメールを送れと、誰が言った?」
相沢は社の恐ろしい剣幕に、ビクッと肩を震わせた。
ごもりながら、助けを求めるように黒川の方をチラチラと見た。
「しゃ、社、それは黒川専務が、コンプライアンスのリスクが最優先だと」
「それに、引き渡しの続きはプロジェクトののメンバーでもできると」
久はしきれないというように、吐き捨てるように言った。
「できるわけがないだろう」
久は額に汗をにじませていた。
「さっき野会が話で、はっきり言ったんだ」
「この案件は、瀬が率いて発した核の特許と、本の履実績を見て契約したものだとな」
「瀬個の承認がなければ、向こうはいつでも本体の契約を方に打ち切れる」
久はきく息を吸い込んだ。
そして、私の方を向いた。
声の調子が、目に見えて柔らかく、すがるようなものに変わった。
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「瀬」
「今回のことは、社内の管理にきな穴があった」
「事部の解雇決定はすぐに取り消す。関わった者は厳しく処分する」
「だから、この案件は止めないでくれ」
「承認の類をもう度作り直して、引き渡しを済ませよう。いいな」
私は久の顔を静かに見つめた。
ひどく焦っている。
それでもまだ、ので損得の計算をしている顔だった。
私は何もじなかった。
このたちにとって、私は最初から最まで、実績の数わせに使える具に過ぎない。
いざとなれば、いつでも切り捨てられる駒なのだ。
私は静かにをいた。
「社、結構です」
私は自分の着の襟を、静かにで直した。
言ずつ、はっきりと告げた。
「雇用契約はもう解除されています」
「システムからのメールは、全社員に届いています」
「法律、私はもう御社の社員ではありません」
私は黒川と相沢の方を瞥した。
「120億の件は、誰にでもできる仕事だとお考えのようですから」
「黒川専務と相沢部から、野会に説していただいてください」
私はそう言い終わると、踵を返した。
そのまま迷いなく、社のドアへ向かって歩きした。
背越しに、久社の鳴る声が聞こえた。
それになるように、黒川の慌てふためいた声も響いた。
私は振り返らなかった。
ドアをけ、真っ直ぐに廊を歩きった。
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そのの午。
発部のフロアに、若い男が1やってきた。
黒川専務の甥である、翔だった。
イギリスの学をてきたばかりの、実務経験のない若者だ。
翔は発チームのデスクの島のでを止めた。
主任プログラマーの瀬戸輔を見ろして、軽い調子で言った。
「野精の案件のインターフェース仕様と、コアのソースコード、全部まとめてもらえますか?」
「の商談に持っていくんで」
瀬戸はタイピングしていたキーボードからをした。
怪訝な顔で翔を見げた。
「どなたですか?」
翔は悪びれもせず答えた。
「えっと、今から州案件の責任者になる黒川です。聞いてませんか?」
瀬戸は即座に首を振った。
「聞いてません」
「それに、ソースの持ちしには発責任者の承認がいります」
翔はく笑った。
「だから、その責任者が僕なんですよ」
瀬戸は真顔のまま言い返した。
「発責任者は瀬さんです」
「社内規定の承認者欄に、瀬さんの名で登録されています」
翔は面倒くさそうに息を吐いた。
「瀬さんはもう解雇されたんです」
「じゃあ承認できるがいませんね」
瀬戸はたくそう言い捨てると、画面に目を戻した。
翔はし黙ってから、気を取り直すように言った。
「あのですね、向こうではこういうのはもっとフラットにやるんですよ」
「そもそも、この構成古いとうんです」
「データの受け渡しのところ、全部クラウドに寄せちゃえばいいのに」
瀬戸は呆れたように再び顔をげた。