"120億円の契約を取った帰りにクビになった" 第2話
画面には相沢の名が表示されていた。
私は通話ボタンを押し、スマホをに当てた。
話の向こうから、相沢の事務な声が響いた。
「瀬さん、既読がついているのに返信がないので」
私はややかな声で答えた。
「今読み終わったところです」
相沢はい息を吐いた。
「そうですか。では確認事項を3つ」
「品川に着いたら寄りせずに事部へ来てください」
「野精の契約の原本と付属類式を提してもらいます」
「それからパソコンと社内システムのパスワードも」
私は窓のの流れる景を見つめたまま、言葉を返した。
「パソコンはもうそちらでロックしたんですよね」
相沢はすぐに答えた。
「のためです」
相沢はしを置いた。
そして、図に声を柔らかくして言った。
「それとね、瀬さん、これはあくまで私の好ですが、懲戒ではなく退職という形に切り替えるもあります」
「類に1枚署名してもらえればね、懲戒解雇の経歴は次の転職で必ず響きますから」
私は静かに問い返した。
「退職は」
相沢は乾いた声で答えた。
「それは規定ません」
私は唇の端をしげた。
「つまり懲戒のお咎めだけは決してやるから、黙ってていけということですね」
相沢は満げな声をした。
「言い方が悪いな。会社としては最限の配慮です」
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私は表を引き締め、まっすぐにを向いた。
「1つ聞かせてください。この処分は誰の判断ですか?」
相沢は即答した。
「会社の判断です」
私はさらに問い詰めた。
「事部の判断ですか?」
相沢はし言い淀んだ。
「いや、それは黒川専務も承済みで」
相沢はそこで言葉を切った。
そして、慌てて取り繕うように言った。
「とにかく会社の正式な決定です。私個の話ではありません」
私はく息を吐いた。
「わかりました。分です」
相沢は怪訝そうな声をした。
「分。何がですか?瀬さん」
「原本は必ず持ってきてくださいよ。あれは会社の」
私は相沢の言葉を遮り、画面からをして通話終のボタンを押した。
スマホを膝のに置いた。
相沢のから、はっきりと黒川の名がた。
それだけ分かれば、もう確かめることは何もなかった。
あのたちは、この契約のを甘く見ている。
私のことも、ひどく甘く見ている。
120億円の契約は、本体部分には確かに野精の社印が押されている。
けれど、案件が実際にくかどうかは別の話だ。
付属の技術ライセンスと、指名実施責任者にかかっているのだ。
この条項は、野精の野総郎会が、自分できしたものだった。
会がから信用しているのは、私が連れてった発チームだけだった。
契約の履続きは、プロジェクト責任者である私が、子システムで最終承認をって初めて稼働する。
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私の承認がなければ、契約は切の効力を失う仕組みになっている。
黒川たちは、ハンコさえ押されれば全部終わりだとっているのだろう。
私のことは、いつでも取り替えの効く、使いりの営業だと見しているのだ。
私は再びスマホをに取り、案件管理のアプリをいた。
画面の真んに、通がていた。
『プロジェクト責任者は最終技術引き渡しの承認をってください』
迷う理由は1つもなかった。
私は指先を画面に滑らせた。
承認を取り消して、プロジェクトを保留にするボタンを力く押した。
画面に保留状態のマークが点灯した。
それから、私は元の鞄をけた。
本社に提するはずだった、技術履確約の正本を取りした。
番の署名欄に、さっきいたばかりの私の名がある。
案件を本当にかすための、もっともな数枚のだ。
私は両でそのの束を掴んだ。
内のの乗客たちが見ているで、ビリッと2つに裂いた。
さらにねて、またビリッと裂いた。
細かくなったくずが、エアコンのに乗って通のに落ちた。
通の向こうの座席にいた男性が、驚いたように聞から顔をげた。
私は慌ててはいなかった。
のは、すっとえ切っていた。
果実だけをもぎ取りたいなら、ごと根っこから抜いてやる。
私がいなくなって、あの120億をどうやってべるのか。