"今回は、探さない" 第13話
自の言葉と本の話
その夜、達也は夜までパソコンのに座り続けていた。
カチャカチャと、拙いブラインドタッチの音がリビングに響いていた。
私は温かいほうじ茶を淹れて達也のデスクの脇に置いたが、画面を覗き込むことはしなかった。
達也もまた、「ちょっと見てくれ」とは言わなかった。
翌の夜、締め切りまであととなった頃、達也がパソコンを閉じた。
「送った」
達也は充血した目をこすりながら、私を見た。
「志望、全部き直したよ。の会社の業績なんて、しかかなかった。その代わり、この週で宅を歩き回って、払いされ続けて、それでも軒の話を聞いてもらえたときのことをいた。歳のリーダーに鳴られて、自分のITスキルのさを痛したことも、正直にいた。……みっともない経歴だよ。でも、嘘はつもない」
私は胸の奥がくなるのをじながら、たださく頷いた。
「それと、もうつ」
達也はちがり、スマートフォンを握りしめた。
「佐野に、話する」
「……え?」
「コネを使ってもらうためじゃない。麻の夫としてじゃなく、の応募者として、仁義を通したいんだ」
達也はベランダへとていき、ガラス戸を閉めた。
たいの夜が吹き抜けるベランダで、夫の背がさく震えていた。
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話に向かって、達也が何度もをげているのが、カーテンの隙から見えた。
「……夜分遅くに恐れ入ります。麻の夫の、佐藤達也です。……いえ、妻から頼まれたわけではありません。御社の法営業の般公募に、先ほどエントリーさせていただきました。……はい。麻には『切添えはするな』と止められていました。ただ、佐野さんのお名がある部署だとり、言、私のからご挨拶をさせていただきたくてお話しました。……麻の夫としてではなく、歳のの応募者として、私の経歴を見ていただきたいとっています」
達也の姿勢は、かつての傲な「元課」のそれではなく、かといって惨めに卑屈になっているわけでもなかった。
自分ので面にち、を被っただけが持つ、静かな誇りがあった。
、私のスマートフォンに佐野から話がかかってきた。
昼休みのオフィスの喧騒の、佐野の声はどこか興奮していた。
「麻ちゃん、本取られたよ」
「……達也のこと?」
「昨、類選考のリストを見てたらさ、達也さんの名ががってきてさ。事が『この代半の応募者、異だけど面いですね』って言ってきたんだよ。現の臭い苦労も、自分の至らなさも全部さらけしてて、それでも顧客と向きいたいっていう量が凄かったって」
佐野がふっと笑った。
「そのあと俺に直接かけてきた話も、すごく良かったよ。『妻の力は借りません』って、きっぱり言われちゃってさ。今、次面接だったんだけど、営業本部が即決したよ。『うちが今求めてるのは、こういうプライドを捨ててを啜れるベテランだ』ってさ。来週の最終役員面接、ほぼ形式だけだよ。内定、確実だ」
ビルのから見げるの青空が、眩しかった。
私は目元をで覆った。
涙が零れそうになるのを、必で堪えた。
彼が自分ので、ドアを押しけたのだ。