"今回は、探さない" 第12話
目の告
「……麻」
達也の声がかすれていた。
を握る指先が、微かに震えている。
「これ、佐野に本、連絡を入れてくれたのか?」
夫の瞳に、懐かしいが宿っていた。
、彼が何かに躓くたびに見せてきた、甘えと依のだ。
「妻がなんとかしてくれた」という、あの無邪気で残酷な期待。
「佐野に言えば、類は通るんだろ? おから『夫が応募するからよろしく』って、メール本入れてくれれば……次面接だって、かなり駄を履かせてもらえるんだろ?」
達也がを乗りしてきた。
その顔には、ここ週で消えかけていた「領の良さ」が、再び浮かびがりそうになっていた。
私はテーブルので、自分のをねわせた。
指先がたかった。
けれど、声は驚くほど穏やかだった。
「佐野には、何も頼んでないよ」
「……は?」
「推薦も頼んでないし、裏もけてない。これは、ネットで誰でも見られる公求票を印刷しただけ」
達也の顔から、すっとが引いていった。
「なんでだよ……。締め切りなんだろ? 今から般応募で突っ込んだって、何百もの応募者に埋もれて類で落とされるに決まってるだろ! 佐野っていう確実なパイプがあるのに、なんでおは悪をするんだよ!」
「悪じゃないの」
私は首を横に振った。
目尻がくなるのを、必で堪えた。
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「達也さん。私ね、ずっと考えてたの。どうして今回、私がここまで頑なにあなたを助けようとしないのか」
達也が息を呑み、私の顔を見つめた。
「私はね、あなたを懲らしめたかったわけじゃないの。……私が、怖かったのよ」
「怖かった……?」
「、あなたが仕事で悩むたびに、私はりいに話をして、報を集めて、先回りしてレールを敷いてきた。のことだってそう。庭の面倒な問題は、全部私が引き受けて解決してきた。私はそれを『良妻の務め』だとってた。でもね、違ったの」
私は自分の胸元をぎゅっと押さえた。
「私は、あなたたちに『お母さんがいないと何もできない』ってわせたかったのよ。誰かの役にっていないと、自分がされる価値がないとい込んでた。あなたのを縛って、転ばないように抱きかかえて、そのくせ『このは頼りにならない』ってので見してた。……あなたの自を奪っていたのは、私だったの」
リビングに、い沈黙が落ちた。
達也は唇を半きにしたまま、直していた。
「私が佐野に話本かければ、あなたはまた全な所にける。でもそれは、私の顔を伺いながら、私の脈にぶらがってきるの続きよ。……脈ってね、タダじゃないの。私が誰かにをげるとき、私はかけて築いてきた仕事の信用を削って、借を作ってるの。
あなたはそれを、ただの『便利な具』だとってたでしょ」
達也の肩が、びくりとねた。
「はそこにあるわ。条件も、仕事内容も、今のあなたにこれ以ないチャンスだとう。でも、そのを叩くのは、あなた自でなきゃダメなの。私の名を切使わずに、歳のの営業としてび込む覚悟があるなら……自分で応募して」
達也はテーブルののを見つめた。
その瞳の奥で、激しい葛藤が渦巻いているのが見えた。
頼りたいという本能と、今ここで引きがれば本当に何かが壊れてしまうという恐怖。
い、い分が過ぎた。
やがて、達也はゆっくりと息を吐きした。
そのが、から静かにれた。
「……わかった」
掠れた、けれど芯のある声だった。
「佐野には、おの名はさない。俺の言葉で、エントリーする」